「これが当たり前だと思ってコートに立つなよ」
Bリーグができ、新潟ではファンに支えられる最高の3年間を送ることができた。一方で、過去には同じようにプロ化を懇願していたが、その檜舞台に立つことなく無念の引退をしていった先人たちがいる。「おっさんのたわ言になっちゃうかもしれないけど…」とBリーグの後輩たちへメッセージを送った。
「過去にもプロ化の話があったというのは聞いていました。結局はいろんなことがあって、うまくいかなかったですが、本気でプロ化を目指して努力した方がたくさんいました。でも、完全なプロリーグの舞台に立てないまま引退していったわけです。そういう方々の努力があって今がある。
Bリーグができたことはうれしかったですし、ようやく憧れのステージができあがったと思いました。過去には、外山(英明)さん(熊谷組、大和証券、アイシン/日本人プロ選手第一号)や佐古(賢一)さん(いすゞ自動車、アイシン/ミスターバスケットボール/現日本代表アシスタントコーチ)などこれまでのリーグで活躍された方々がプロ化に向けて努力されたけど、結局ダメだったと聞いています。
おっさんのたわ言になっちゃうかもしれないけど、『これが当たり前だと思ってコートに立つなよ』と言いたい。ここに来るまでの苦労した時代も知ってるし、今の華やかな時代も知っている。でも、今あるような舞台に立ちたかった人たちがどれだけいたか、これができるまでに何人の人たちが無念の思いで引退していったか、そこは忘れて欲しくない。完全プロ化したときに、節政(貴弘)さん(東芝)とか少し上の素晴らしい活躍をされた先輩たちと一緒に立ちたかったですし、そのプレーを僕自身も見たかったです。
今の若い子の中にはもちろん良い選手がたくさんいます。僕らの上にも素晴らしい選手はたくさんいたわけで、その中でがんばって来たのが折茂(武彦)さんであり、唯一、歴史の生き証人です。先輩たちの努力があって、今のBリーグがあることを忘れてはいけない。今ある環境や待遇を当たり前だと思わず常に上を目指して頑張って欲しいと思いますし、日本のバスケのレベルを更にレベルアップさせて欲しいです。簡単にここまで来たわけではない。いろんなことがあって、ここまでたどり着いたと僕自身は思っていますので──」
ふてぶてしいプレーに魅了された高校生をこんなに長くコート上で見続けられたことに感謝するとともに、あらためてお疲れ様と言いたい。昨今、どのカテゴリーにおいても、日本体育大学出身のコーチが活躍している。今後の鵜澤潤の活躍を祈念するとともに、これからが注目である。
鵜澤潤 引退インタビュー
無念の思いで引退した先人たちの努力と苦労があって「今のBリーグがあることを忘れてはいけない」
part1「日本人ビッグマンの需要が急低下した新レギュレーション」
part2「能代工高のオーラと田臥勇太との衝撃的な出会い」
part3「達観していたJBL時代から完全プロ化して気づかされた危機感」
シャンソン化粧品シャンソンVマジック 鵜澤潤アシスタントコーチ
Wリーグでセカンドキャリアを歩みはじめるBリーグのビッグマンたち
文 泉誠一
写真 泉誠一、B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ編集部