「やらんわけにはいかんやろ」故郷で現役復帰した大森勇
2019-20シーズンより、B3リーグに参入したトライフープ岡山。スクールや3×3で岡山のバスケ界を盛り上げてきたが、「常に挑戦する姿勢を示し続ける」というクラブの理念どおり、新たなページを開いた。2019年9月14日、初陣となった鹿児島レブナイズ戦で2連勝をあげ、続く第2節は待ちに待ったホーム開幕戦を迎える。会場となったジップアリーナ岡山には、連日2千人を超える多くの声援を背に岐阜スゥープスとの接戦を制し、開幕4連勝と幸先の良いスタートを切った。
「本当に感動しました。開幕戦なのに、なんか集大成のような気分でした。B2でも2千人を超える試合はあまりなく、それがB3の初年度のチームであの雰囲気を味わうことができたのは感無量でした」と、大森勇にとっては忘れられない体験となった。2016-17シーズンを最後に、岩手ビッグブルズで大森は引退を表明している。岡山出身ということもあり、トライフープ岡山が2014年に屋内バスケコートをオープンさせる以前から中島聡代表との交流があった。オフシーズンに帰省した際にはそのコートで汗を流し、3×3のメンバーとしても関わっていた。引退後、Bリーグ参入へ向けたマネジメントとスクールやユースチームの育成を任され、スタッフとしてセカンドキャリアを歩みはじめる。現役を退いたはずの大森だったが、トライフープ岡山とともに奔走しているうちに新たな感情が沸いてきた。
「いざ、B3に向かって準備がはじまると自分の中でも燃えてくるものがありました」
生まれ育った岡山にプロクラブが誕生するのだ。気がつけば、「やらんわけにはいかんやろ」と中島代表に現役復帰の気持ちを伝えていた。引退後にアキレス腱を切るケガもあったが、もう一度コンディションと戦うメンタルを取り戻す。開幕に間に合わせたことで、あの感動をコート上で味わう体験ができた。
チームは上向きの状態で終えられたが、B3リーグ5位の現実
開幕4連戦と華々しいスタートだったが、その後は5連敗を喫し、一筋縄ではいかない。「シーズン途中でヘッドコーチが辞任してしまったことや外国籍選手が一時帰国するなどもあったけど、この業界はトラブルがつきものです。なるべくトラブルがないこと、またはトラブルに対して迅速に対応するのがGMとして重要な仕事だとも思っています」という比留木謙司はGMであり、開幕当初は選手としてコートに立ってもいた。トラブル後は選手登録を抹消し、指揮官としてチームを立て直していく。少しずつ白星を増やし、これからという時に新型コロナウィルスの影響を受け、B3もシーズン半ばで中止となった。23勝17敗と勝ち越しには成功したが、12チーム中5位に終わったファーストシーズンを比留木はこう振り返る。
「最後の10試合を7勝し、チームとしては上向きの状態でシーズンを終えることはできました。とはいえ、結果は結果。10勝のうち7勝できる力をシーズン序盤から発揮できていなかったことに関しては、GMとしても選手としても責任を感じています。チームとしてのレベルやどこにスタンダードを置くかということに関しては、悔いが残っています」