part2「努力は嘘をつかない」より続く
オフコートで見せる意外な素顔
広瀬健太の代名詞は『身体を張った泥臭いプレー』だ。以前、そのことについてどう思っているか?と尋ねると「代名詞かどうかはわかりませんが、少なくともそういうプレーがなかったら選手として自分の価値はないと思っています」と答えた。コートの上では絶対手を抜かない。粘り強く、執拗に相手に食らいつき、存分に嫌われることが自分の仕事だと思う。そんな広瀬の“戦う姿”を見ていると、チームの中では厳しい先輩であり、普段の生活においても妥協を許さないストイックな人というイメージが沸いてくる。あの容赦ないディフェンスから『怖い人』と思われている節もある。しかし、素顔の広瀬は……全然違った。
たとえば天皇杯優勝祝賀会でのこと。この祝賀会には選手の家族も出席していて、小さなお子さんの姿も多かったのだが、ふと見ると、子どもと同じ視線になるまでしゃがみこんでにこにこ顔で話しかけている選手がいる。それが広瀬だった。相手はチームメイトのお子さんだ。それも1人ではなく、2人も3人も。何を話しているのかはわからないが広瀬が何かを言うと、つられたように子どもたちが笑う。見ていてなんともほっこりする光景だった。
広瀬自身、5歳の男の子と2歳の女の子を持つ父。時間があれば自転車で幼稚園の送り迎えもする。新型コロナの影響でStay Homeの生活が余儀なくされた時期はもっぱら子どもたちとゲームをしたり本を読んだりして過ごしていたらしい。「お父さんがずっと家にいてお子さんたちはうれしかったのではないですか?」と、聞いてみると「そうですね。そうだったらいいと思います。まあ、嫁はあまりうれしくなかったかもしれませんが」と、ジョークで返された。自分の時間があるときはよく本を読む。「ジャンルにとらわれずいろいろ読みますね。小説なら「半沢直樹」のドラマで有名になった池井戸潤なんかよく読みますし、小説以外でもおもしろそうだなと思ったらとりあえず買います(笑)」。最近おもしろかったのは『フェルマーの最終定理』だと言う。フェルマーの定理と言えば数学の本ではないか!と、驚いていると「いえ、たしかに数学に関する本ではあるんですが、それに基づいたノンフィクション小説みたいな感じで、数学が苦手な人でも関係なく読める内容なんです。おもしろいですよ。ぜひ読んでみてください」と、勧められた。うん?これもなんだか意外。
しかし、もっと意外だったのは数ヶ月前から始めたというツイッター(@knt_hrs)のつぶやきだ。「今まで気になりつつもSNSはまったくやってなかったんです。でも、そろそろやってみるのもいいかなあと思って、流行りのインスタグラムは写真を載せなきゃならないので面倒くさいじゃないですか。その点ツイッターなら文字だけだし(笑)、インスタより気軽にできそうなので始めてみることにしました」。ところが、広瀬のこの“つぶやき”がすこぶる楽しいのである。そこでいくつかのツイートを勝手に一部抜粋してみた。