「チーム練習が始まったときも自分はまだリハビリ中で別メニューをやっていたんですけど、コートの外から見てもいい雰囲気は伝わってきました。サクレの引退は僕も驚きましたが、新しく入ったセバスチャンもジャクソンも明るい性格でどんどんチームに溶け込んでいく感じでしたね。2年目の(ライアン)ケリーもそうですが、いっしょにプレーする外国籍選手って人間性がすごく大事だと思うんですよ。技術はもちろん必要ですが、チームメイトとしてやる上でまず大事なのは人間性です。その点、昨シーズン(2019-20)のうちの外国籍選手たちは3人ともすばらしかった。6人の(日本人)選手についてはみんな“職人”っていうか、それぞれが自分の得意分野をしっかり持っていて、それを生かした仕事をする印象ですね。性格も明るくて楽しいやつばかりだし、いいチームになりそうだなというのはありました」
だが、その一方でいつから自分は練習に参加できるのだろう、この中に入ってどれぐらいの力を出せるのだろうという不安がなかったわけではない。バスケット人生初の大ケガ、手術後は満足に歩くことさえできなかった。そこからコツコツとリハビリに励み、小さくても1つずつ“できること”を増やしていく日々。「昨日できなかったことが今日はできたということに喜びも感じたし、決してネガティブなことばかりではなかった」とは言うものの、最初にチーム練習に復帰したときは初めて感じる“怖さ”もあったという。
8か月ぶりにコートに立ったのは、11月17日の京都ハンナリーズ戦だ。が、いわばこれは慣らし運転。「実際に試合に出て自分の状態と感触をつかむためのものだったので、プレータイムも2分ぐらいだったと思います」。そこから徐々に出番を増やしていき、迎えたのが年明けの天皇杯だ。広瀬は3試合すべてにスタメン出場して“ディフェンスの仕事人”関野とともに相手を圧倒する激しい守りを披露した。準々決勝のレバンガ北海道戦は76-60、準決勝の滋賀レイクスターズ戦は96-69といずれも圧勝。試合後、インタビューを受ける伊佐ヘッドコーチの口調も明るかったが、その中で1つ印象に残ったコメントがある。広瀬を除く全員が得点をマークした滋賀戦について語ったときのことだ。「結果的に90点以上取れたことでどうしてもそちらに目が行きがちですが、今日の試合もやはりディフェンスがあっての勝利です。広瀬と関野が出足からインテンシティあふれるディフェンスを見せてくれたことで流れをつかみました。今日、広瀬の得点はなかったですが、それ以上の仕事、チームにとって非常にインパクトのある仕事をしてくれたと思っています。あらためて彼の存在の大きさを感じた試合でした」──それは長いトンネルを抜けて復帰した広瀬に向けたひと言であり、同時にその姿を称える言葉だったような気がする。
part2「努力は嘘をつかない」へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ編集部