── その成果が出たのが終盤の2試合ということですね。名古屋ダイヤモンドドルフィンズに66-63で勝利したのは2月16日、中止期間を経て無観客で行われた富山グラウジーズ戦に80-79で勝利したのが3月17日、スコアを見てもわかるとおりいずれも大接戦でした。特に富山戦は無観客の中で行われた今シーズン最後の試合ということもあり、今後の記憶にも残るものになったのではないですか。
はい、そう思います。お客さんがいない中でやる試合はどんなものになるのかちょっと想像できなかったんですが、始まってしまえば無観客であろうとなかろうと公式戦の1つであることに変わりはないですし、やるべきことも同じ。僕たちは僕たちらしく泥臭くボールを追いかけ自分たちのバスケットをやるだけです。最初になんとなく感じていた違和感も知らないうちに忘れていました。
── 最終戦で鈴木さんは30分12秒出場、4得点、7アシストの記録を残しました。先ほど今シーズンは「思うようにプレーできた試合は1つもなかった」と言われましたが、ファンにとっては「ようやく鈴木達也が帰って来た」と思えるような試合だったかもしれません。
あの試合もコンディションは決していいとは言えなかったんですけど、メンタル面では「なんとしても勝ちたい。絶対勝ちたい」という強い思いがありました。無観客試合でもしっかりしたパフォーマンスを見せたかったし、それが接戦を制することにつながったのかなと思っています。本当にシーズン最後の試合になっちゃいましたけど、自分たちのバスケットは結構できたんじゃないかと。
── 長いトンネルの先にやっと出口が見えてきたという感じでしょうか。
そうですね。もし、リーグが中止にならず試合を続けることができたら、勝ち星を増やしていけたかもしれないという思いはあります。そこでリーグが中止になったことは、やっぱり残念、すごく残念ですね。
── 予定されていた試合がすべてなくなり、自粛要請が出された期間、どんなことをして過ごしていたのですか?
うーん、何もしてないですね。そりゃ1人でいるより誰かとしゃべっている方が楽しいので、たまには友だちとTV電話したりしましたけど、基本、何もやってないです。なんだろう、強いて言えば自分と向き合っていましたね。
── 自分と向き合っていた!
いや、まじめな話、コロナウイルスの影響で外に出られずリフレッシュすることが難しかったじゃないですか。その分、自分と向き合う時間が増えたというか。
── いろいろ大変なシーズンでしたが、そこから得たものを糧に自分はいかに次のシーズンに向かうか…とか、そういうことを考えていたわけですか?
もちろん、そういうのもありますが、コロナのおかげであたりまえのことがあたりまえじゃなくなっちゃうと、小さなことに喜びを感じることもありますよね。ああ、こんなちっちゃなことでも幸せを感じられるんだなあと気づくと、なんて言うんですかね、自分もちょっとでもいいから人のためになることをして生きていきたいなあとか、そんなことを考えたりして。えー、自分、おかしいですか(笑)。
part3「来シーズンどれだけできるかによって自分のキャリアは決まる」へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ編集部