── 選手がそれに戸惑いを感じていたということですか?
そうですね。外から見ている僕が感じたぐらいですから、実際にコートに立っている選手、中でも今までこのチームでやってきた選手はより強く感じていたんじゃないかと思います。「なんか違うんだよね」とか「このままでいいんだろうか」みたいな不安があっただろうし、実際それが伝わってきました。選手の間で話し合いもしましたが、今シーズンはヘッドコーチだけじゃなくて、外国籍選手もガラッと変わっていたし、その中で何を(チームの)スタンダードにしていくかは難しい問題でした。僕は普段から思ったことは結構はっきり口にする方ですが、自分が試合に出ていないことでわかりえないこともあるんじゃないかという思いもあったし…。
── 一歩踏み込めないような?
はい、正直、言いたいことはいろいろあったのですが、思っていることをコートで表現できない立場だったので、言える部分と言えない部分がありました。やっぱりコートに出ている選手にしかわからないことってあるじゃないですか。そういう意味では自分の中にずっともやもやしたものがあったのはたしかです。
── 開幕から16連敗のチームがようやく白星を挙げたのは12月7日のレバンガ北海道戦(74-61)でした。アウェイのこの試合は鈴木さんの復帰戦にもなったわけですが、どのような気持ちでコートに立ったのか振り返っていただけますか。
正直に言えば、あの試合は身体を含めて自分は全然ベストな状態ではありませんでした。でも、その中で考えていたのはチームにエナジーをもたらすことです。それが自分のやるべきことだと思っていました。復帰戦で連敗がストップしたのはうれしいことではありましたが、満足はしてなかったですね。というか、今シーズンは自分のプレーに満足できた試合はありません。思うようにプレーできた試合は1つもなかったです。振り返れば、あの復帰戦を含め、ずっともどかしい気持ちでコートに立っていたような気がします。
── これまでも三遠には何度か取材に伺いましたが、チーム練習後の自主練も活気があって、選手間のコミュニケーションもしっかり取れている印象がありました。オフコートでも笑顔が目立つ明るいチームという印象です。でも、勝てない時間が長くなるにつれチームの雰囲気も変わっていったようなことはなかったですか?
それはやっぱりありますね。負けが続くとどうしても(チームの)雰囲気も暗くなります。試合をしていても流れがいいときは雰囲気もいいんですが、流れが悪くなったときに耐え切れない時間帯が多くて、結果的に敗れるということも少なくなかったので、そこから次の試合に向かう切り替えは簡単ではなかったです。だけど、暗い話ばかりじゃないですよ。結果が結果だったので、振り返るとどうしても暗い話が多くなりますが(笑)、苦しいシーズンの中でみんなが下を向いていたわけじゃありません。
── 途中、河村勇輝選手(当時福岡第一高校)が加入したことも『高校生の特別指定選手』として大きな話題を呼びました。観客数も大幅にアップしましたし、注目度も増しました。そういう意味ではチームを活気づけたと言えるのではないですか。
たしかにそうですね。高校生離れした彼のプレーは観客を楽しませるだけじゃなく、チームに刺激を与えてくれたと思います。コートの外の彼は普通の高校生で、ほんと可愛いんですよ(笑)。みんなに可愛がられていました。
part2「終盤の2試合には手ごたえを感じることができた」へ続く
文 松原貴実
写真 B.LEAGUE
画像 バスケットボールスピリッツ編集部