part2「生き方を貫くことで伝わる何かがある」より続く
必要とされるチームでプレーしたい!
新型コロナウィルスの影響で2019-20シーズンが中止となった2か月後の2020年5月29日、山形ワイヴァンズは栗原貴宏との2020-21シーズンの契約合意を発表した。
栗原へのオンライン取材がおこなわれたのはその2日前だが、インタビューの過程で「来シーズン(2020-21シーズン)はどうするのか?」という質問はどうしても出てきてしまう。インタビュー時の窓口は前チームの宇都宮ブレックスだったが、実際、栗原は自由交渉リストに載っている。正確には宙ぶらりんな状態。ケガを克服し、次のステップに踏み出す前向きな思いを聞くためにも、来シーズンへの思いは聞いておきたい。
── 来シーズンはどうしたいと考えていますか?
栗原 とにかくプレーすることが一番です。選手である以上、高いレベルで優勝を目指したいという思いはありますけど、現実として1年以上まともにプレーしていなくて、年齢的にも30前半。どのチームもいい評価をしていないし、なかなか声がかからないのも事実です。やるからにはまたB1でという思いはありますが、今はB1、B2に関わらず、どのチームであれ、1年間ケガなくやりきりたい。それが一番の思いです
── いくつかオファーは来ていますか?
栗原 実はほぼ決まっているんです。
── そうなんですか? じゃあ、チームの発表を待ちましょう。
栗原 僕は言ってもいいんですけどね。
── では掲載については、チーム発表後にするので、聞かせてください。
栗原 いいですか?
── (なぜかこちらが緊張して)はい。
栗原 山形です。
今思えば、チーム名を明かしてもいいと言ったのは、栗原のバスケットボールに対する込み上げる渇望ではなかったか。前例のない手術をおこない、1年以上もコートから離れた自分に、それでもまだプレーする場があるんだ。その思いを誰かと共有したかったのかもしれない。
山形といえば、前シーズンの最終盤、左足の手術を乗り越えた栗原がプレーする場を求めて期限付き移籍をしたチームである。公式戦への復帰もそこで果たしている。ただ新型コロナウィルスの拡大により、BリーグはB1、B2ともに第28節を最後にシーズンの中止を発表。栗原が公式戦に出場したのも3月14日、15日にホームでおこなわれた茨城ロボッツ戦の2試合に留まった。
その山形への完全移籍について栗原はこう語る。
「昨シーズン(2019-20シーズン)は2試合しかできなかったのですけど、こんな僕にチャンスを与えてくれたことへの感謝もあります。期限付き移籍の意思表示をしたときも、最初に手を挙げて、声を掛けてくれたのが山形でした。だからそのときもB1だとか、B2だといった思いはなく、すぐに『お願いします』と返事をしたんです。コロナでシーズンが終わって、自由契約リストに載ったときも早い段階で声を掛けてくれたのがやはり山形でした。選手としては必要としてくれるところでやりたいですし、昨シーズンの恩もあるので、山形でプレーしようと思ったんです」