── 開幕戦は藤井選手とツーガードで先発起用されましたが、二人で一緒にコートに立つ強みとは?
僕と祐眞が二人で出ているときが、ディフェンスのインテンシティ(強度)が一番高く、チームにとっての明確なスイッチにはなると思っています。やっぱりローテーションにしても、プレッシャーの強度にしても祐眞と出ているときが一番スムーズだし、二人の阿吽の呼吸で『攻めるディフェンス』を展開できる自信はありますし、そこは明確だったと思います。「今シーズンはディフェンスからだよ」というメッセージも含めて、開幕戦はあのメンバーにしたと僕は思っていますし、そこは体現できました。祐眞はどちらかと言うと2番(シューティングガード)でこそ生きるタイプですし、特にオフェンスに関してはそう感じています。僕がゲームをデザインして、コントロールしながら、祐眞がかき回すという形はBリーグの中で一番の破壊力があると思っていますし、自信もあります。今シーズンで、よりそれが確たる自信にもなりました。
── 篠山選手が不在の間、3年目の青木(保憲)選手の成長も見られたと思いますが?
やっぱり試合に出て、少しずつ活躍することで顔つきが変わっていきました。限られた少ない時間の中でコンスタントに結果を出し続けることは、すごく難しいことです。でも、そうやって成長していかないとメインのポイントガードにはなっていかないですし、そういう意味でも彼は伸びています。まだまだこれからも伸びるし、成長段階の良い波に乗ったシーズンだったと思います。これからもっともっと飛躍的に成長していくと期待しています。
── チーム内の競争が激しくなることによるメリットは?
試合が楽になりますよね。練習中からかなり削り合っているので、本番の試合になったときに相手のプレッシャーディフェンスやスピードを感じても「練習の方がきついな」と思えるのは、単純にチームにとってプラスになっています。お互いに刺激し合うことで、チーム力は絶対に上がります。試合に勝てば良いというものだけではなく、お互い切磋琢磨してプレータイムを奪い合う形が、今シーズンはより明確に川崎のチームの中でできあがったと思います。
── ケガをし、チームを客観的に見られたことで気づいた点はありますか?
これまでの川崎は、キャプテンである自分がチームのリーダー的存在となり、柱としてニック(ファジーカス)と辻(直人)がいるという体制が明確にありました。そのせいもあり、ミーティングやハーフタイムにしゃべるのはこの3人のうちの誰かになってしまっていました。だいたい僕かニック、たまに辻という時期が続いていたんですよね。でも今シーズンになり、それが少しずつなくなってきました。何チームも渡り歩いてきた年上の大塚裕土さんが加入したことで、リーダーシップを持っていろんな場面で発言をしてくれました。それによりチーム全体としても「しゃべっていいんだ」とか、「しゃべった方がいいんだ」っていう空気感がやっと出てきました。僕がケガをしてからは、祐眞やハセ(長谷川技)などいろんな人がリーダーシップを執り、少しずつコミュニケーションの質と量が増えていったことは客観的に感じました。今シーズンは、キャプテンとして「しゃべりすぎないように意識しよう」というテーマがありました。みんながしゃべれる空気を作ることと、少ない機会の中でどれだけチームをプラスにできるかを考えていました。そのベースが今シーズンは自分のケガもあって、できてきたという手応えはあります。来シーズンはさらにみんなでチームを作るという雰囲気になり、誰がキャプテンをやっているのか分からないようなチームになっていければ良いと思います。
part2「世界のスタンダードに近づくためのリーグ改革は『川崎が引っ張った』」へ続く
文・写真 泉誠一
画像 バスケットボールスピリッツ編集部