自分勝手に50歳で現役復帰の可能性!?
「まさかあれが最後になるとは思っていなかったし、結果的には最後になってしまった」と話した折茂選手だけではなく、誰もがこの幕引きは想像していなかった。27年のキャリアの中でも無観客試合ははじめての経験であり、「やはりブースターあっての選手だということをあの試合で感じた」という言葉に後悔の念もうかがえる。コート上で、ユニフォーム姿でお別れする引退試合も計画されているようだが、新型コロナウイルスによる昨今の情勢により先行きは見えない。社長として、新シーズンへ向けた準備をする忙しい季節が迫ってもいる。
功労賞を受賞したBリーグアウォードでは「自己チューだし、自分が一番だとしか考えていない」と自覚しており、チームメイトの桜井良太も「自分が中心で物事が進んでいると思わないで欲しい」と訴え、笑いを誘った。その性格を生かし、自分勝手に1日契約などで現役復帰する可能性を期待してしまう。50歳でBリーグのコートに立ち、シュートを決め、自らの最年長記録更新を狙っていただきたい。
バスケ人生を赤裸々に振り返った『折茂武彦 弧を描く』(著・佐藤大吾/北海道新聞 https://shopping.hokkaido-np.co.jp/book/products/detail.php?product_id=786)を楽しく拝読した。いつでも包み隠さずインタビューに応えてくれた折茂選手だが、背番号9の理由については、「こういうのは言わない方が面白い」と最後まで明かさなかった。「噂ばかりが立つ方が、まあ僕のことを忘れない、忘れられないためにもいいのかな。なので、ナイショです」とヤンチャな表情を見せたのもまた折茂選手らしい。
Bリーグにおける新たな最年長は桜木ジェイアール(シーホース三河)が43歳、竹田謙(横浜ビー・コルセアーズ)が41歳で続く。五十嵐圭(新潟アルビレックスBB)と田臥勇太(宇都宮ブレックス)も40歳を迎える。10歳上の折茂選手の存在によってベテランの定義が少し混乱していたが、ようやく正常に崇められる時代がやって来た。
NBAの最年長記録はナット・ヒッキーの45歳363日であり、今から72年前もの昔話である。トレーニングやケアが日進月歩で進歩を遂げている中でも、40歳を超えて現役を続けたNBA選手は28人しかいない。試合数の違いなどを差し引いても、49歳までトップリーグで戦い続けた折茂選手の快挙は、今後さらにその価値が高まっていくはずだ。
文・写真 泉誠一