part1「『ポイントガードとしてはまだ勉強することだらけ』(藤井)」より続く
辻直人は高校時代から幾度も日本一の栄冠を手にしてきた。洛南高校ではウインターカップ2連覇、青山学院大学ではインカレ2連覇、東芝(当時)に入った年には前年度リーグ最下位のチームを準優勝に押し上げ、翌年にはNBL初代王者の座に就いた。NBL最後のシーズン(2015-2016)は、アイシン(現・シーホース三河)を相手に2連敗からの3連勝で優勝。この大逆転勝利を生んだのはシューター辻の底力だった。その辻が長期コートを離れざるを得なくなったのは昨年のこと。試合で痛めた左肩関節脱臼の手術をし、目標であったワールドカップ出場への道も閉ざされる。「持っている男」と言われ続けてきた辻にとって心身ともに辛い日々が続いたが、それを乗り越えて迎えた1月の天皇杯、辻はコートの上で完全復活宣言を告げる。そこにいたのはシューターとしてだけでなく、司令塔として全力でチームを牽引する辻直人だった。
※この記事の取材はシーズンの途中終了前、3月10日に行われました
「勝負所どころで託された1本は必ず決められると思って打つ」(辻)
── 続いて辻さんにお聞きします。自分はシューターであると意識したのはいつごろですか?
辻 中学に入ってからだと思います。バスケはミニバスから始めましたが、ミニバスには3ポイントシュートはなかったから、(3ポイントシュートを)打ち始めたのは中学から。もともとシュートを打つのは好きでしたから3ポイントを打つのも楽しくて、チームの中では1番打っていたと思います。確率とかはそれほど気にしていませんでしたが、1年の終わりの大会で3ポイントを8本決めたのは覚えています。シュートが自分の武器だという意識はそのころからあって、シュート練習は時間がある限りやってましたね。
── 当時はそれほど確率は気にしていなかったとのことですが、名実ともにシューターと言われるようになった今、辻さんが考える『シューターと呼ばれる人のシュート確率』ははどのぐらいでしょう。
辻 確率ですか?うーん、シューターと言ってもいろいろでバンバン打てるチームにいるシューターなのか、多くても(1試合に)5本ぐらいしか打てないシューターなのかで数字も違ってくると思いますが、少なくともシュート練習では80%以上は決めなきゃいけないでしょうね。
藤井 練習で辻さんのシューティングを見ているとほぼ落とさない。ほんとにすごいですよ。
── ただ『シュートは水物』という言葉もあります。その日のシュートタッチの良し悪しは試合が始まってすぐわかるものなのですか?
辻 それはわかります。あくまで自分の感覚ですが、たとえ最初のシュートを外したとしても、その外し方で今日のタッチは悪くないなとか、そういうのはわかります。でも、逆に今日のタッチはあまりよくないと感じてもシューターは打たなきゃなりません。たまにブザービーターとか、勝負を決める1本を決めたとき「打った瞬間、入ると思いましたか?」と聞かれることがありますが、入るとか入らないとかは考えていないですね。そのとき自分の中にあるのは入る入らないじゃなくて、決めてやるという思いだけです。だから、自信はありますよ。決められる自信を持って打ちます。