── 言い合い? 何が起こったんですか?
宇都 よくあることですよ。僕が攻めているときに、まず僕がファウルされて、そのファウルをした選手を押し返すような形でシュートを打ちにいったんですね。そのとき悟は「オフェンスファウルだ」と言い、僕は「いや、先にこっちが押された」という話から始まったんです。基本的に僕は曲げないんです。だって僕がファウルをされたのは事実ですから。そのときは審判役の人もいない練習だったから、なおさら僕は曲げなかった。悟も折れずに来たから「何!?」みたいになって、次に悟が言葉を発する前に僕が圧をかけてしまったんです。そうしたら悟が逃げた……逃げたっていうのは、どこかに行ったとかではなく、気持ち的に引いてしまったんですね。だから練習後、「俺が圧をかけたのも悪いけど、お前が俺と話さずに(気持ちが)どこかに行ったのも悪いんじゃないか」っていう話し合いをしました。僕は悟の思っていることを聞きたかったから、圧をかけたこと自体は謝ったうえで「お前は自分の思ったことを話さずにどこかへ行くのはよくないと思うぞ」というやりとりがありました。
前田 僕も負けず嫌いなんですけど、たとえば5対5のような勝ち負けのある練習で、宇都さんほど本気になる人はいないと思います。ここまで本気の人と一緒にやったのは初めてです。僕も言うほうなんです。たとえばチーム内の試合でも審判が間違ったコールをすると、僕はこれまで厳しく指摘していたんですけど、宇都さんはそれ以上というか、本当に練習から絶対に負けたくない……外国人みたいなメンタルです。
── 大人になっても厳しく言ってくれる宇都選手は、前田選手にとってどんな存在ですか? 以前、試合後の取材で「宇都さんと食事をしたときに、『お前が壁だと感じている壁なんてちっぽけなものだよ』みたいなことを言われた」とおっしゃっていました。
宇都 そんな話したかな?
前田 薄っぺらいって言われました(笑)。
宇都 言ったかなぁ?
前田 本当にコート上のコーチみたいな感じじゃないですかね。コート外でもいろんなことを教えてくれる人ですね。
part4「日本で一番のガードと、危険なシューターへ」へ続く
文 三上太
写真 安井麻実