part2「エースへの扉が開かれる瞬間」より続く
情熱が生む稀有なメンタリティー
チームメイトから託される選手を「エース」と定義する宇都直輝。その定義にばっちり合致しながらも、今はまだ自らを「エース」と認められない前田悟。それでもなお宇都は前田を富山のエースになってほしいとエールを送る。厳しい言葉を投げかけるのも、宇都が前田のポテンシャルを認めるからこそ。
ではそう言う宇都直輝自身はどんなメンタリティーを持っているのか。エース論の続きから、それが垣間見える対談の第3話───。
── 宇都選手は、それこそずっとエースでしたが、今はパスを配給し、ゲームをコントロールしています。そこへの葛藤はありませんでしたか?
宇都 ないですね。僕は自分を“スーパーエース”だと思っているので。悟とレオが富山のエースだとして、そのエースを使うのが僕ですから。僕のほうがはるかに上の立場なので、誰がエースとかって全然気にならないです(笑)。エースが「パスをよこせ」って言っても、パスをするかどうかを決めるのは僕なんです。
── そのメンタリティーは興味深い。
宇都 いや、普通、ポイントガードってそうですよ。ポイントガードがコールをして、ポイントガードがボールを運んで、チームオフェンスが成り立つんです。僕はそれだけ重要なポジションにいるという自覚のもとでプレーしているので、大事な場面でヘッドコーチが「エースに託したい」と言っても、そのとき僕がコートの中にいて、その指示とは違うところでノーマークができていたら、そこにパスを出します。もちろんそれがミスになることもあるかもしれないけど、そのときは自分で責任を負います。その覚悟は持っています。
── 宇都選手といえばゴールに向かっているイメージが強いのだけど、そうしたメンタリティーはどのように積み上げてきたのですか?
宇都 僕は練習中から情熱をもってプレーしている自負があります。それくらい熱くバスケットをしていると、周りも認めてくれる部分もあるので、僕はそういうところから自分に自信をつけているところがあります。周りからは何か厳しいなと感じられることを発したとしても、自分がその発言をしても成り立つようなプレーしたり、練習をしています。だから先日も悟と言い合いになったんですけど。