── どういう気持ちの変化だったのですか?
前田 やっぱりスタートを任されるようになって、プレータイムももらえているなかで、自分がその自覚をもってやらなければいけないことがひとつ。もうひとつは、やはりコートに入ったらルーキーとか関係ないので、そこは自分が決めてやるくらいの気持ちでやらなきゃなっていう自覚も出てきたのかなって思います。
宇都 自覚? どうかなぁ(笑)? というのも、僕が「悟、お前がエースの気持ちでやれよ」って言うと、「いや、僕はエースじゃないんで……」って言うんです。僕としては今の富山は悟がエース級の活躍をしていると思っているんですけどね。まぁ、どうせ、陰では「俺がエース」だと思っているんでしょうけど、僕の前ではそう言わないんです。
前田 いや、エースじゃないです。
宇都 エースって思っていいと思うよ。
前田 エース……エースって何ですか?
宇都 誰かから託される人だろ。
前田 エースかどうかはわからないけど……
宇都 周りじゃない? エースって周りがさせるものだからね。
前田 そうっすね。
宇都 自分から「自分はエースだ」って言って、それで平均5点とかだったらヤバイじゃん。そうしたら俺らも「お前じゃないだろ!」ってなるし。でも俺らチームメイトがエースだって思っていたら、エースでいいんじゃない?
前田 そうなんですかね。わからないけど、これからはエースで……
宇都 俺もどちらかというとエースって感じじゃないもん。俺はポイントガード。そうは言っても試合後のインタビューなんかでは「エースガード」とか言われたり、記事に書かれたりしていると「ああ、そう見られているんだな」って思うから、そういう自覚をもって言動をとらなきゃいけないなって思うよね。意味わかる? あ、お前にはちょっと難しいかな(笑)?
前田 いや、わかります(笑)。
宇都 だから客観的に見てくれている人がどう思うかだよ。今で言えば、日本人の得点源は俺と悟だし、外国籍だとレオ。その3人が……別にエースは1人じゃなくてもいいからね。その日に調子のいい選手がその試合を決定づければいいわけだから。悟もエースという自覚を持っていいんじゃないかな。
前田 そうですね。
宇都 実際、エース級のメンタルでシュートは打っているんですよ。練習でもパスしたら絶対に帰ってこないから。
前田 ハハハ
宇都 それくらいの気持ちでプレーしているので、あとは周りが言っていることを受け入れるかどうか。俺らが「お前はそういう立場にいるんだからやれよ」って言ったときに「いや、僕はエースじゃないです」って言うんじゃなくて「はい!」って言えるくらいになってほしいな。
part3「情熱が生む稀有なメンタリティー」へ続く
文 三上太
写真 安井麻実