── ポイントガードになることへの戸惑いや違和感はありませんでしたか?
宇都 なかったですね。トヨタ自動車(現アルバルク東京)に入るときにポイントガードとして入ったので、「ああ、僕はポイントガードなんだぁ」って思ったくらい。僕としてはどこのポジションでもあまり気にならなかったです。ただ、やはりポイントガードってほかの選手から信頼を得るのは大変ですよね。特にアルバルクでやった2年半はそれがすごく顕著に出た期間だったと思います。当時は必死に自分の役割を遂行するだけでした。相手のガードをつぶすことを一番に考えて、フォーメーションは特に考えてコールしていたという記憶はあまりありません(笑)。
── 富山に移籍して、それがどう変化しましたか?
宇都 フォーメーションのコールはいろいろ考えます。特に今シーズンは悟と僕が得点を取る形に持っていったほうがチームとして流れを作りやすいので、悟と僕がシュートを狙えるような動きをメインで考えていました。レオ(・ライオンズ)は1対1の強い選手ですけど、チームとして形を作るというより、彼自身が自由にできるよう、あまりフォーメーションを使うことは考えていなかったかな。もちろんゲームの流れを見ながらアドバンテージがあるところを狙うこともしていたし、状況に応じて選択はするようにしていました。たとえば悟のシュートが入っていれば悟のフォーメーションを多めに使いますし、チーム全体が重いなと感じたら自分で行くようにしていました。点数が確実に欲しいなと思ったらレオに1対1をさせたり……そういう感じでフォーメーションは作るようになりましたね。
前田 シュートタッチがいいときって他から見てもわかると思うので、そういうときは立て続けに僕がシュートを打てるフォーメーションをコールしてくれるのは感じます。それに僕はどちらかといえばシュートを打ちたいし、点を取りたいタイプなので、あまり口に出しては言わないけど、ボールに触れていないとフラストレーションを溜めてしまうんです。そういうときに宇都さんが気を遣ってくれて、僕のコールをしてくれるときもあります。逆に言えば、僕自身が少しずつ信頼を勝ち取れているのかなとも思いますね。あとは決めきれるシュートをしっかり決めたり、チームの流れが悪いときのシュートを確実に決めなければいけません。
── 前田選手がフラストレーションを溜めているときってわかりますか?
宇都 開幕当初、悟はスタートじゃなかったので、僕がベンチに下がっているときにすごくわかりやすかったですね。っていうか、誰でもわかりますけどね。タイムアウトでベンチに帰ってきたときの表情の不機嫌さといったら……むしろ、わからない人のほうが不思議なくらいです(笑)。
前田 ハハハ、出ちゃってるんですかね。
── 昔からそういうタイプですか?
前田 学生のころって周りに同級生が多いじゃないですか。だから、ボールをもらえずにフラストレーションが溜まると「パスをよこせ!」って言っていましたね。
part2「エースへの扉が開かれる瞬間」へ続く
文 三上太
写真 安井麻実