── では、相手チームのシューターについてはどうですか?たとえば自分が不調のとき、相手のシューターが絶好調だったとします。くそぉ!とか思いません?
狩野 思わないです。
佐藤 えぇ~!めっちゃ思いますよ、自分。めちゃめちゃくそぉ!と思います(笑)
狩野 思うに、自分にはライバル心っていうのがあまりない。(他のシューターを)すごいなあと思うことはありますよ。金丸さん(晃輔・シーホース三河)なんか「入って当然」みたいに打ってるし、石井さん(講祐・サンロッカーズ渋谷)のメンタルは強いなあと感じるし、松井さん(啓十郎・京都ハンナリーズ)や辻さん(直人・川崎ブレイブサンダース)はここぞというときにきっちり決めてくるし。ほんと、みんなすごいシューターです。けど、ライバルとは思わないんですね。っていうか、自分はあんまり他人に興味がないんです。
── 他人に興味がない!
狩野 興味がないって言うと誤解されるかもしれないけど、僕はわりと『我ありき』っていうか、人がどうこうという前にまず自分はどうあるべきかみたいなことを考えるタイプなんですね。だから人のことはあまり気にしません。
佐藤 聞いてると、ほとんど僕と逆ですね。さっきも言ったけど、ミスしたら僕は結構引きずるし、相手の(同じポジションの)選手が活躍すればくそぉ!と思うし、周りの人に興味もあるし(笑)。あっ、祐介さん、試合前にバッシュをどっちから履くか決めてます?
狩野 うん、いつも右から履く。
佐藤 僕はいつも左から。いやぁ、ここまで逆ですね(笑)
狩野 ハハハハ(笑)
── 『我ありき』という言葉から常にベクトルを自分に向けていることがうかがえます。
狩野 でも、周りのシューターに比べて自分が足りていないものは感じますよ。
── たとえば?
狩野 いい意味でシューターが持つセルフィッシュなものが欠けていると思います。勝敗を分ける場面で「なんでもいいからボールを俺に寄こせ」みたいなのが自分にはない。自信がないというのではなくて、そういう局面でも周りを優先するところがあるんですね。(ボールが)回ってくればもちろん躊躇なく打ちますが、なにがなんでも自分が打って決めてやるとは思わない。金丸さんとか辻さんとかを見ていると「最後は俺が決めて勝ってやる」というのが伝わるじゃないですか。だからこそ彼らは日本代表に選ばれたり、シューターとして上に行けている気がするんですね。
── 狩野さん自身はまだそこまで行けてないと?
狩野 行けてないですね。いい意味でのセルフィッシュさはコーチからも「もっと出せ」と言われているんですけど…。うーん、そこはなかなか難しくて、まだまだだなと思います。もう少しシューターとしてのプライドを持つべきなのかもしれません。
part3「『日本代表の中でも自分が貢献できるプレーは絶対あるはず』(佐藤)」へ続く
文 松原貴実
写真 安井麻実