part1「『3番は自分の利点を生かせるポジションだと思う』(佐藤)」より続く
狩野祐介は練習の1時間以上前に体育館にやって来て、毎回入念なストレッチとシュート練習を行う。練習後もまたシュート練習と入念なストレッチ。その狩野を「本当にストイックなプレーヤー」と評するのは今季アルバルク東京からレンタル移籍したシェーファーアヴィ幸樹だ。「いつもやるべきことを黙々とやり続けるのを見ていると、強い精神力を感じます。だれもが認める努力家であり、頼れるシューター、僕らを背中で引っ張ってくれるキャプテンだと思います」
「シューターとして自分に足りないのは、いい意味でのセルフィッシュさ」(狩野)
── 狩野さんは昨年11月の富山グラウジーズ戦で3ポイントシュートを10本(10/14)沈め、シューターとしての存在感を示しました。よく「ゾーンに入った」という表現をされますが、ご自身ではそういう感覚はあったのですか?
狩野 ゾーンと言う感覚はなかったですね。もちろんシュートタッチは良かったですけど、自分の感覚で言えば「ああ今日は入ってるな」というぐらい。自分が何点取っているとかもあまり意識してなかったです。11本目を落としたのは覚えてますけど。
── 3ポイントを10本決めても「ああ今日は入ってるな」ぐらいの感覚なのですか?
狩野 他のシューターの人はどうなのかわかりませんが、僕の場合はそうです(笑)
佐藤 あの試合は祐介さんが決めるたびに会場がすごく盛り上がったし、僕は興奮しましたけどね(笑)。まあ、祐介さんならあれぐらい決めても不思議はないので全然驚かなかったですけど。あれだけ高確率で沈めると、相手のディフェンスが祐介さんに寄るじゃないですか。おかげで周りが生きてくるというか、僕らが攻めやすくなったのは確かです。
── あれ以来、狩野さんへのマークはより厳しくなったのでは?
狩野 それはあります。卓磨ぐらいのサイズの選手が付いてくることもありますし、そこはガード陣のパスやビッグマンのスクリーンに助けてもらったり、個人的には(ディフェンスが)付きにくくなるようシュートレンジを広げて打つ練習を増やしています。1番大事にしているのは『迷わず打つ』ことですね。厳しいけど打たなきゃならない場面というのは必ずありますから、そのときも迷わず打つ。仮に落としたとしても『打てたことは良かった』と考えるようにしています。そう考えるようになったきっかけは、僕が滋賀に移籍してきたとき、ヘッドコーチだった遠山(向人)さんから言われた言葉ですね。「たとえ1%でもチャンスがあるならシュートは打った方がいい。打たなければその1%も無駄にすることになる」。なるほどなあと思いました。そりぁディフェンスがタイトでなかなか打たせてもらえなかったり、タフショットの連続になったりしてメンタルをやられることはありますが、それは自分で乗り越えるしかありません。
── 打たないシュートは入らない。
狩野 そういうことです。だから失敗したことはあまり考えすぎない。忘れはしないけど、ああすればよかった、あの方がよかったと引っ張らないようにしています。
── 切り替えは早い?
狩野 早いですね。体育館を出たらバスケのことはあまり考えたくないので、自然とスイッチがオフになります。
佐藤 すごい!僕は結構引っ張りますね。
狩野 いや、切り替えないとどんどんストレスを貯めちゃうタイプだとわかっているから、コートを離れたらあえて考えないようにしてる。けど、たまに風呂入ってるときなんかにふと考えちゃうことがあるんだよね。ヤバイ!と思って、切り替えるけど(笑)