── では、もし生まれ変わってまたバスケットをするとしたらポイントガードをやりたいですか?
五十嵐 ええぇー(笑)。うーん、今言ったみたいにポイントガードは奥が深いし、その分やりがいも感じますけど、生まれ変わったら別のポジションをやってみたいかなあ。センターは嫌だけど(笑)、サイズが2mぐらいあって、バンバン動けて、3ポイントシュートも打てるみたいな選手になってみたいですね。
柏木 僕も次やるんだったら圭さんが言ったみたいなオールラウンドプレーヤーかシューターがいいですね。もちろんシューターは高確率でシュートを決めなきゃならないし、ここ一番のシュートは外せないし、シューターにしかわからない苦労はあると思いますよ。でも、見ていると結構好きにシュート打ってて気楽でいいなあと思っちゃう(笑)。その点ポイントガードは責任が大きいじゃないですか。その分やりがいはめっちゃありますけど。
五十嵐 ポイントガードってそう簡単にはできないポジションですよね。僕なんてベテランと呼ばれる歳になって、新潟に来てからやっとゲームコントロールの深さがわかってきたかなって感じです。コンバートして「明日からやってくれ」と言われても一番難しいポジションでしょうね。
── ポイントガードの大型化というのは結構言われ続けてますけど、そのわりにサイズのあるポイントガードは育っていないような気がします。
柏木 やっぱり1番経験値を必要とされるポジションがポイントガードだからじゃないでしょうか。身長の低い子は子どものころからポイントガードを任される比率が高いから早くからガードの技術を身につけることになる。大きい選手が途中からやり始めても“出遅れ感”は否めないから、どうしてもその差が出てしまう。その差は結構大きいように思います。
五十嵐 身長が高い選手に1ヶ月、2ヶ月教えて「ポイントガードをやれ」と言っても難しいですよね。サイズがあって、スピードがあって、ボールハンドリングも悪くない選手でもそうです。少なくとも高校生ぐらいからやらないと難しいんじゃないかな。
柏木 思うに、大きい子でも途中から指導すれば1番はできるんですよ。だけどポイントガードができるかというとまた違う話になります。たとえば日本代表で田中大貴とか比江島(慎)がポイントガードをやってるじゃないですか。彼らはパスも巧いし、判断力もある。30分は十分にこなせます。ただ残りの10分ですね、勝負どころの10分でチームを勝たせられるかというとまだ難しい気がします。
五十嵐 大貴なんてもともと何でもできる賢くてスマートなプレーヤーです。ワールドカップを見ていても即席であそこまでできるのは本当にすごいですよ。だけど、まだチームを勝たせられるポイントガードにはなれていないのかなあと思います。もちろん可能性は十分感じますけど。
柏木 さっきも言ったように残り10分、5分の駆け引きがポイントガードの仕事。その時間帯をいかに支配できるか、それがポイントガードの力の見せどころでしょうね。
part4「苦しむチームを引っ張り上げるのはベテランの仕事」へ続く
文 松原貴実
写真 沼田侑悟