part2「先輩から学んだものの上に自分のスタイルを構築する」より続く
ポイントガードはもっとも経験値が求められるポジション
── では、ここからお2人のポイントガード論に迫りたいと思います。まず『ゲームをコントロールする』というのはどういうことだと考えていますか?
五十嵐 それに関しては自分、まだ勉強中です。
柏木 おい!(笑)
五十嵐 まじめな話をすると、僕らの世代の前には佐古さんとか節政さんとかがポイントガードのトップにいて、ゲームコントロールはこういうものだというのを示してくれたような気がします。周りの選手を生かし、大事なところで得点もでき、勝つための流れを作るというイメージですね。だけど、僕はそういった意味ではコントロールするタイプではないなと思っていて、若いころは特に意識しないように努めていたところがありました。それより自分の武器であるスピードをどう生かすか、それをより強く意識していたように思います。
柏木 僕が考えるゲームコントロールは、『試合に勝つために一番必要なこと』です。ひと言でゲームコントロールと言ってもタイムコントロールとかいろいろありますが、それを全部ひっくるめてポイントガードはゲームを支配する存在じゃないとだめだと思うんですよ。点を取りに行くのか、周りを生かすのか、ここでは時間を使うのか、単にプレーだけじゃなくて、いろんな駆け引きもポイントガードの仕事。勝つためにはこういうことをやっていかなきゃならないと仕向けていくことがゲームをコントロールすることであり、ポイントガードの仕事だと思っています。
── 「ポイントガードがしっかりしていないと試合に勝てない」というのもよく耳にする言葉ですが。
五十嵐 そういうのを聞くと「日本だなあ」と思いますね。言い方が合っているかどうかわかりませんが、少し前の世代、そこには僕らもかぶりますが、その世代のポイントガードはそういった言われ方をしていた気がします。でも、僕個人で言えば「ポイントガードが点を取りに行くスタイルもある」というのをジェリコに教えてもらいました。ポイントガードはこうあるべきだという形にあまりとらわれ過ぎないことも大切だと。バスケットの時代を作っているのはNBAだと思いますけど、今のNBAを見てもポイントガードがいっぱいシュートを打つ、点を取るというのは珍しくない。世界のバスケットもだんだんそういうスタイルが主流になりつつあります。だから、極論すればポイントガードがやや力不足でもしっかりしたエースがいれば勝つことはできるということになりますね。ただし、さっきも話に出たゲームコントロールという点ではポイントガードが担うものは大きい。真介がアイシンにいたときに日立が勝てなかったのは僕に足りなかったコントロール力だったと今も思っているぐらいです。さっき「今も勉強中です」と言って笑われましたが、それは嘘ではなく、この歳になっても勉強しなきゃいけないほど奥が深いのがポイントガードだと思っています。