これからの毎試合を自分の成長につなげていきたい
Bリーグが中断している期間にビッグラインナップの準備をしていた。アギラールとジョーダン・ヒースとともに「ニック(ファジーカス)が帰化選手なので、ビッグマンを3人同時にコートに立たせることができるのがうちの大きな強みのひとつです。それを後半は思い切って試したところうまくいって流れをつかめました」と佐藤ヘッドコーチが言うように、北海道戦は一気に突き放す。「これが川崎にとっての強い武器になる」と手応えを感じていたのはニック・ファジーカスだ。ビッグラインナップを擁した第3クォーターの10分間だけで、ファジーカスは16点を挙げている。アギラールとヒースが高さだけではなくその走力を生かし、「全員でゴールに向かって走ってアタックしていったことで、ニックの得点が生まれた形です」と佐藤ヘッドコーチはその要因を挙げた。
ビッグラインナップにより、「3番ポジション(スモールフォワード)で出ることがすごく楽しいです」というアギラールは、デビュー戦こそ不発に終わったが得意な3Pシュートを生かすことができる。キャリアハイは29点であり、昨シーズンも1度同じ記録に達したときは3Pシュートを7本打って5本成功させた。北海道戦のウォームアップ時はコンスタントに決めてもいた。現在3Pシュート成功率リーグ2位(47.1%)のヒースも、ファジーカスもシュートレンジが広く、もちろん高さを生かしたインサイドも強い選手たちが3人揃えば、対戦相手にとっては的を絞りにくく非常に厄介である。
デビュー戦を終えたアギラールは、「足りない部分はゲーム勘」と不安要素を挙げた。「まず自分が挑戦したかったことはリバウンドの獲り方とチームディフェンスの仕方。練習と試合ではやっぱり強度が違い、その差に慣れることに対して時間がかかり、苦戦してしまった部分もありました。それがオフェンスでシュートが入らなかったことにもつながっていたと思います」と振り返る。頭で考えていることに対し、身体がまだついていかないもどかしさを感じていた。
「今日、試合をしてみて、ゲームの中でどうディフェンスをすれば良いか、どうポジションを取ればシュートチャンスが生まれるのか、ということを確認できました。まだまだ来日して間もないので、チームメイトの特徴も把握し切れていません。彼らの特徴も練習と試合では違う部分があったので、試合ではどういう動きをするかを学び、その中で自分のオフェンスがどこにフィットするかを探りながら、これからの毎試合を自分の成長につなげていきたいです」
優勝を争うチャンピオンシップまで2か月を切った。今週末を皮切りに、延期分を消化するため週3回の過密スケジュールでリーグ戦は進んでいく。1日も早く試合勘を取り戻したいアギラールにとっては、好都合である。
「ファンの前で早くプレーしたいですし、それができる日が早く来て欲しいです。まずはチャンピオンシップに進めるように、毎日努力していきたいです」というアギラールは「日本好き」とも話していた。キャプテン篠山竜青の復帰とともに、優勝へと導くファイナルウェポンがやってきた。
文・写真 泉誠一