プロ契約で迎えられた期待の大学生ルーキー
「病気から復帰して迎えたばかりであり、まだまだ準備ができていない中での試合でした。そこは言い訳できない立場でもあるので、今はいかにチームに貢献できるかが自分にできる最大限のことだと思っています」
日本体育大学の大浦が最後の公式戦に出場したのは、この日と同じ横浜国際プールだった。昨年11月10日の関東大学リーグ戦最終日、89-72で東海大学を下した試合で18点、9アシスト、4スティールと活躍。1部リーグに昇格したばかりの日本体育大学が4位となり、大学日本一を決めるインカレのダークホースとして期待していた。しかし、優勝した筑波大学に77-94に敗れ、ベスト8で大会を退いている。大学最後の大舞台となったが、大浦はずっとベンチに座ったままだった。
「盲腸になって手術し、その術後の回復が思わしくなくてインカレにも出られず、バスケットができない期間も長くなってしまいました」というのが真相だ。本格的に復帰し、プロに向けて準備をはじめたのは年明けからである。その間は個人練習だけであり、今はゲーム勘を取り戻さねばならない。それでも前田ヘッドコーチは、「できるだけ経験を与えたい」と積極的に起用する。
秋田は、ルーキーの今川友哲をライジングゼファー福岡へ期限付で移籍させるほど、今は豊富なロスターを抱えている。特別指定選手は1チーム2人までしか受け入れられず、すでに多田と西野曜(専修大学3年)で埋まっていた。その中において、本契約で迎えられたのも大浦への期待の表れと言えよう。しかし、常に陽の目を浴びて来たエリートではない。
広島県の広陵高校時代は全国とは無縁であり、日本体育大学での3年間は2部リーグでの戦いを強いられてきた。関東1部リーグに昇格したラストシーズン、30点以上獲る試合もあった得点力は平均15.7点、4.2本でアシスト王を受賞し、ようやくその存在感を示すことができた。
「秋田の特別指定の二人に限らず、大学生で活躍している選手も多いです」という大浦も、遅ればせながらプロの世界に身を投じる。「自分の最大限を生かせる状態での復帰を求めてもいました」と病気を乗り越え、ようやくスタートラインに立つことができた。そこに焦りはない。持ち味はトランジションオフェンスとアシストであり、「まだまだ秋田は走れていないですし、ファストブレイクポイントが少ないと思っています。そこを自分が先頭を切って走ったり、周りを走らせることができれば良いです」と抱負を語る大浦は、いよいよ今週末にホームデビュー戦を迎える。
「秋田は熱狂的なブースターの方々が本当にたくさんいます。ホームゲームはまだ体験していないので、その中でプレーできるのが今からすごく楽しみです。ルーキーとしてチームを盛り上げて、秋田のディフェンススタイルをもう少し自分の中に浸透させながら、ここから多田と西野とともに活躍していきたいです」
ピンク色に染まるホームコートに立つイメージをしてもらえば、「緊張は特にしないかな…」とも話していた。攻守に渡り、飄々とアグレッシブなプレーを披露する大浦の本来の姿が待ち遠しい。
文・写真 泉誠一