チームがやるべきバスケットを遂行するためには、ポイントガードはコーチがやろうとしているバスケットを理解しなければならない。それはフリオ・ラマスヘッドコーチが率いる日本代表チームにおいても同じだ。A東京と日本代表、安藤はポイントガードとしてどんな違いを感じているのだろうか。「ルカとラマス、2人のヘッドコーチのスタイルは全然違います。フリーランスの部分は代表チームの方が少し多いかなと感じますが、それは代表の方が自由にできるということではないです。むしろ代表チームの方がオプションが多い分、ポイントガードが考えなきゃならないことも多いかもしれません。一方うち(A東京)の場合はやることが決まっています。ただこれも決まっているから楽だということではなく、決まっているからこそポイントガードは自分のインスピレーションを働かせなくてはならない。相手はうちがこう来ると読んでいそうだからその裏をつこうとか。その瞬時のひらめきも重要です」
18歳でポイントガードにコンバートしたとき「ゲームをコントロールするという意味もわからなかった」という安藤が、今、日本のトップチームを牽引するまでになった。そこで1つ質問。あなたにとってゲームコントロールとは?
「コントロールというのは周りを見ながらゆっくり攻めることだけじゃなくて、ときにはガッと行かなきゃならない。僕はポイントガードがゲームをコントロールするというのは、そういうときのモーターになることだと思っています。ディフェンスをしていて、もしかするとルール上そこは行ったらいけないという場面でも仕掛けたワンスティールで流れが変わるかもしれない。オフェンスでも同じ。僕らのマニュアルにはないのかもしれないけど、1本裏をついたり、自分の1回転で周りがノッてくることもあります。それが僕が考えるゲームコントロールですね。それって技術だけじゃなく感覚の部分も大きいと思うんですよ。それをどれだけ電波のようにみんなに発信できるかがポイントガードの仕事だと思っています」
一気に話したあと、ボソッと一言。「それを完璧にできるポイントガードって本当に少ないと思いますけど」。自分もまた完璧ではないポイントガードの1人だ。しかし、だからこそもっとうまくなれる余白があるのだと思う。2月21日からはFIBAアジアカップ2021予選(Window1)がスタートし、安藤は今年も代表候補として名を連ねた。そして、夏には最大の目標である東京オリンピックが開催される。「オリンピック、出たいです。そりゃあもう出たいです」と、思わず声も高くなるが、その前に達成すべきは「リーグ3連覇」というもう1つの大きな目標だ。「もし、去年の2連覇がなければ僕はワールドカップに行けてなかったかもしれません、3連覇することがオリンピック出場につながるんだとルカにも言われています。これまでアルバルクで戦ってきたことがすべてなので、今はリーグ後半戦に全力を注ぎたいと思っています」。それが現在安藤が描く未来図。まずは全力で勝ち取るリーグ優勝、そこから延びる道はまっすぐ『東京オリンピック』へと続いている。
アルバルク東京 #3 安藤誓哉
描き続ける未来図
part1「大学から始まったポイントガード修業」
part2「カナダでゼロからのスタート」
part3「自分の仕事はチームのモーターになること」
文 松原貴実
写真 安井麻実