若手の強化と高いインテンシティを求めてタイムシェア
プロである以上は勝利を求めなければならない。しかし、勝負事は必ずどちらかが負ける。Bリーグのレギュラーシーズンは60試合と長い戦いが続く。勝つ日もあれば、負ける日もある。事実、全勝しているチームはひとつもない。どこで勝てば良いかを考え、鍛えるのもまたレギュラーシーズンである。プロの世界においては、最後に笑ったものだけが勝者である。
「正直なことを言えば……東地区のリクルートが激しくなっている中、お金で勝負することはもちろんできない」という秋田ノーザンハピネッツの前田顕蔵ヘッドコーチは、劣勢であることを把握している。しかし、そこに悲壮感や言い訳はなく、むしろ楽しいと言った。
「若い選手を獲りながらロスターのバランスを保ってプレータイムはシェアするので、彼らが成長してくれないと目指すべきチームになってはいかない状況です。若い選手が出たときには思い切ってプレーしてもらえるようにしていますし、それがうまくいったときにチームは乗る。それは見ていても楽しいですね」
プレータイムをシェアするもうひとつの要因として、「リーグで一番高いインテンシティを保ちたい」という意図もある。特別指定選手の多田武史(拓殖大学4年)や、2月1日の京都ハンナリーズ戦では合流したばかりの西野曜(専修大学3年)が早くも起用され、動ける選手は全員起用しながらチーム力を高めている。
毎試合、先発メンバーが異なるのは秋田の特徴だ。昨シーズンまで指揮を執っていたジョゼップ・クラロス・カナルスヘッドコーチ(現ライジングゼファー福岡)がその手法を用いてきたが、「選手のモチベーション維持であったり、チームによって選手を使い分けるスタイルは良いな」と前田ヘッドコーチも引き継いでいた。
成長を促す新たな役割
これまで34試合の全てに出場しているのが野本建吾と保岡龍斗であり、成長が見える。2mの野本は外国籍選手のバックアップとして、「ディフェンス面で非常に大きい」と前田ヘッドコーチは信頼を寄せる。昨シーズンよりも役割を増やしたことでプレーの幅が広がり、オフェンスでもチームに貢献していた。
「もともとスコアラーであり、彼が持っている得点能力は乗ればチームに勢いをもたらす」という前田ヘッドコーチは、オフェンスのオプションとして保岡にも新たな役割を与える。昨シーズンは平均18分、今シーズンは約20分とプレータイムはさほど変わらない。しかし、得点は平均5.9点から9.3点へ飛躍させている。「オフボールからしっかりボールをもらってシュートを打つようなプレーは昨シーズンまではなかったです」と保岡が話す成長の裏側には、今シーズンより移籍してきた古川孝敏の存在があった。