インタビューを行った時点では、オリンピックに向かうセルビア代表のヘッドコーチは決まっていなかった。その後、イゴール・ココスコフ(※スロベニア代表やフェニックス・サンズなど多くのNBAチームを指揮してきた名将)に決まり、これから新たなる選考がはじまる。しかし、マチュワンが東京にやって来たのはオリンピックのためではない。「今はアルバルク東京の一員として最大限の力を発揮し、このチームを勝たせることがミッションです。同時にセルフコンディションを下げることなく、2020年に向かって行ければ良いと考えています」と目の前の戦いに集中している。
来年、男子日本代表は44年ぶりにオリンピックへ出場する。銀メダリストにアドバイスを求めた。
「オリンピックの雰囲気は独特なものがあります。メダル獲得が無理だと思えば、もうただ単にオリンピックを楽しめば良いだけです。でも、セルビアをはじめ、必ずメダルを目指してくるチームの選手たちは目の色が違い、集中力も全く違います。ここは肝に銘じておいて欲しいのですが、一人ひとりがオリンピックの舞台でいかに存在感を示せるかどうかが大事になります。集中力を切らすことなく、自分の役割をしっかりとこなすことがプロとして最大限やらなければならないことです」
ワールドカップは5戦全敗に終わった日本代表の現状から言えば、楽しめば良いだけ。しかし、せっかくのホーム開催である。マチュワンのアドバイスに耳を傾け、その存在感を示し、目の色を変えて臨むことに期待したい。
「私自身、オリンピックで銀メダルを獲得したことで次の世代にしっかりとバトンを渡すことはできたと思っています」というマチュワンは今、自らの経験を惜しみなく歴史の浅いBリーグに注いでいる。セルビアのバトンを受け継いできたルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチもまた、「セルビア代表として活躍し、強豪クラブのレッドスターでプレーをしていた英雄です。セルビアでルカコーチがビッグネームであることは間違いないです」というマチュワンとともに、セルビアンスタイルでA東京を世界に引けを取らないクラブへ導いている。
アルバルク東京 #12 ミラン・マチュワン
TOKYO2020に先駆けてやって来たオリンピックメダリスト
part1「リオオリンピック銀メダル、U19ワールドカップはアメリカを倒して世界一」
part2「悪かったときの経験を全てプラスに変えてステップアップ」
part3「世界と戦うことが楽しいセルビア代表」
文 泉誠一
写真 吉田宗彦