part2より続く
秋田ノーザンハピネッツはプレシーズンのカップ戦「アーリーカップ東北」で優勝を果たした。しかし古川孝敏はまだまだチームに“強さ”が備わっていないと、けっして手放しで喜んではいない。
「今日の練習でも『流れがないな。バタバタしているから、結果オーライでシュートが入っているだけだな』と感じるところがありました。だから勢いのあるときは勝てるし、それがなければボコボコにされる可能性もある。いいチーム、強いチームって堅さ……最近では『ソリッド』って言っていますけど、自分たちのバスケットをしてゲームを手堅く運ぶことができます。苦しい時間帯でも我慢して、最後に勝ち切るっていう、そういうバスケットが今の秋田にはまだできないと思います。だからもっともっとみんなでコミュニケーションをとって、秋田としてのソリッドを作っていかなければいけません。そのためにこういうことが必要なんじゃないかっていう情報を僕は与えたいんです。『俺をこう使え』ではなく、『チームとしてこうしたほうがいいんじゃない? そうすればこうなるんじゃない?』 といったコミュニケーションが多い気がしますね」
とはいえ、必要以上に声を掛けるわけではない。いくつかのアドバイスを送っても、すぐにすべてを理解してくれるとも思っていない。時間はかかる。なぜなら古川が多くを経験してきたように、若い選手もまた彼らなりの経験を積んできているからだ。そうした経験はすぐに覆せるものでないし、古川自身、覆そうとも思っていない。チームメイトのなかにある経験に、自分の経験がうまく融合できれば、また新しい経験が生まれてくる。その逆もある。若い選手たちの瑞々しい感覚が古川に潤いをもたらすこともある。それによって古川もまだまだ成長できる。お互いがお互いを高め合う関係を古川は秋田で求めているわけだ。
そういった変化を続ける選手の集まりだからこそ、やはりチーム作りは難しい。「コーチではないので、こんなことを言っていいのかわからないが」と前置きしながら、古川はこう言及している。
「これまでの経験から考えても、1年ではチームはできあがりません。だからこの数カ月でできるわけもない。ましてや秋田は今シーズン、新しいヘッドコーチを迎えて、新しいバスケットに取り組み、僕を含めた新しい選手も多く入ってきています。そのなかでチームとして何がいいのかを作らなければいけないんです。1シーズンを通してもできないことはあるだろうし、シーズンの終盤にようやく固まってきたと思えるものが出てくることもある。よく“チームケミストリー”とか“セイムページ”って言われますけど、それを作るのってすごく大変なことなんです」