「試合をしながらチームを作り、最後には強くなれるように強化」鈴木貴美一ヘッドコーチ
先に挙げたガードナーとともに、旧リーグで4度の得点王に輝いた川村卓也も加入し、三河はオフェンシブなタレントが豊富だ。しかし、ロスター13人中8人を入れ替えて臨む今シーズンは、リスタートした状況でもある。アーリーカップ東海で優勝したが、「まだケミストリーができていない状態であり、その場限りで勝ってしまうと『我々は強い』と選手たちも勘違いしてしまうことがある」と鈴木ヘッドコーチは開幕前から不安を抱いていた。
A東京との2戦目は95-99で惜しくも敗れたが、ガードナーは27点、金丸が35点を挙げ、さらに岡田侑大が17点と続き、そのオフェンス力を存分に示す。お互いにターンオーバーが少ない好ゲームだった。「勝てるゲームだったが、最後大事なところでミスというか、若さが出てしまったところは残念だった」と鈴木ヘッドコーチは敗因を挙げた。
残り3分、追いかける三河の熊谷航がターンオーバーを犯す。ミスを帳消しにすべく、素早くディフェンスに戻るが、勢い余って菊地祥平にバスケットカウントを決められ、88-84と2ゴール差をつけられてしまった。リーグ屈指のポイントゲッターを揃える三河だが、ポイントガードの熊谷と長野誠史はいずれも2年目(熊谷は昨季特別指定)の若い選手たち。何度も優勝してきた三河には、鈴木ヘッドコーチの右腕として、良いポイントガードが必ずいた。
「若いガード陣がいろんな経験をし、勝ちながら良い経験をしていくことがチームの成長、そして勝ち星を増やしていくことにつながる。そこをフォーカスして強化していかなければならない」
ミスもあったが熊谷は6本、長野も5本のアシストを記録しており、頼もしい仲間たちがいる。「オフェンスでケミストリーを作っていくことが、まずひとつ。シュートが入らないときもあるので、しっかりディフェンスを強化していかなければ勝つチームにもならない」と新生三河はスタートしたばかりである。水曜ゲームが多かった10月を経て、「またしっかり練習をし、ステップアップできるように頑張りたい」と巻き返しを図る鈴木ヘッドコーチも、長いシーズンを幾度も戦い抜いてきた哲学がある。
「これまでも試合をしながらチームを作り、最後には強くなれるように強化してきた。勝敗だけで言えば、非常に残念な結果が続いているが、最終的には一番強くなったチームが優勝する。アルバルクもシーズン中は調子が悪くても、最後に良いチームになって2連覇してきた。我々も、そのレベルよりは低いかもしれないが良い選手が揃っている。良いところと悪いところを明確にして、伸ばしていくのが強いチームであり、現状の結果はあまり気にしていない。まだまだ取り返すことができる時期でもある」
A東京戦を終え、「今後に繋がる負けだった」とポジティブに捉えていた。新戦力とのケミストリーが合い、ガード陣が成長すれば一気に変わるポテンシャルは揺るぎない。次戦は好調なサンロッカーズ渋谷を迎えるホームゲームだが、タフな戦いこそチームを成長させる特効薬である。それはA東京も同じだ。
文・写真 泉誠一