練習時間もこれまでと同じく選手たちが仕事を終えた夜間。「今はシーズン前ということで週5回練習しています。そのうちの3回は今までと変わらず部活動が終わったあとの高校の体育館を借りてやっていて、時間は20時~21時30分までです。残り2回のうち1回は中学の体育館で20時~21時30分まで。あと1回はホームアリーナ(ぎふ清流アリーナ)で21時~23時までやっています。夜とはいえ選手の仕事はバラバラですし、残業もある。(練習に)全員が揃うことはなかなか難しいという点もこれまでと変わりませんね」
アマチュアクラブ時代から志を同じくして戦ってきたメンバーに変動はなく、日本人選手9人のうち7人が30代の既婚者。「はい、年齢層は年々高くなっています(笑)」。その中で「攻守ともにチームを引っ張る選手になってほしい」と、田中が期待を寄せるのが吉田健太郎、岩松永太郎だ。ともに24歳のポイントガード。「うちの持ち味は粘り強いディフェンスなんですが、目指すのはそこから展開するアップテンポのバスケット。昨シーズンを振り返ると、ディフェンスの部分では通用したという手応えがありました。が、オフェンス面を見れば個々の力ではなかなか得点に結びつかず、もっと組織力を高めていかなければならないと感じています。チームの連携プレーの精度を上げるためにも吉田、岩松の若い2人には頑張ってもらいたい。ファンのみなさんにはぜひ元気な“W太郎”に注目していただきたいと思います」
今シーズンの目標は昨年届かなかった『勝率5割』を達成すること。その先には『B3リーグ優勝』、そして『B2リーグに昇格』という目標がある。それを叶えるころには「少なくともチームの半分ぐらいの選手がバスケットでご飯が食べられる、いわゆるプロ選手になっていられるようにしたい」と思う。そのためにも今はコートの内外でやるべきことは山積みだ。
「岐阜県のプロスポーツクラブは現在FC岐阜(サッカー)しかないので、プロスポーツに対する認知度も高いとは言えず、スポンサー獲得も容易ではありません。最初は法人広告30万円をメインに募集していましたが、途中から5万円でサポートしていただく“足長チケットパートナー”を設定したり、走りながら考え、学びながら前に進んでいるという感じですね。僕らがBリーグで戦う目的のひとつに『岐阜にスポーツ文化を根付かせること』というのがあるので、厳しくてもあきらめるわけにはいきません。時間がかかってもコツコツと根付くまでやり続ける、挑戦し続けるつもりです」
思えば10年前、全国クラブ選手権優勝を目指したスゥープスにはたった3人の選手しか集まらなかった。そこからのスタートだった。掲げた“日本一”への道は長く、「てっぺんは遠いなあ」と感じたことを覚えている。
「でも、そのたびにみんなで声かけ合って頑張ってきました。正直、バスケのクオリティーはまだまだ劣っていますが、志を高く目標に向かう姿勢だけはどこにも負けてないつもりです」
これまでの10年、これからの10年、さらにはその先の10年へ。岐阜のプロスポーツの未来を見据えたスゥープスの挑戦は続く。
part3「岩松永太郎選手インタビュー 2年目のシーズンを牽引する期待のニューフェイス」へ続く
文 松原貴実
写真 安井麻実