日々忙しく過ごしている中で、今1番嬉しいのは、街中で声をかけてくれる人が増えたことだという。ポスターを貼り、チラシを配り、イベントに出演し、クリニックを行い、今まで自分たちを知らなかった人が、チームや選手を認知してくれるようになった。「頑張ってください!」と声をかけてくれる人の数はこの数ヶ月で確実に増えた手応えがある。
「僕たちはプロチームであり、プロのバスケットボール選手である以上、肝心なのは試合で“魅せる”ことです。試合を見に来てくれた人に、バスケットっておもしろいと思ってもらいたいし、『べルテックスって応援したくなるチームだな』と思ってもらいたい。会場に来てくださる方の中には初めて生でバスケットを見るという人も多いと思います。そこで僕たちが仮にも手を抜いた試合をしたら次の試合も見に行こうという気持ちにはならないでしょ。初めて見る僕らの試合がおもしろくなかったら、そのお客さんの“次”はないんです。だけど、僕らにはどのお客さんが初めて試合を見に来てくれたのかはわかりません。だから、毎回毎回、どの試合にも“初めてのお客さん”がいると思って全力を尽さなきゃならない。それを当たり前にしなきゃならない。全員がそういう気持ちで戦えるチームになりたいです」
1度は30歳で引退することを考え、時を同じくして大ケガに見舞われ、が、そこから再び新しいコートに立つことを決意した自分を時々俯瞰することがある。「周りの人からは人からはポジティブな人間のように思われがちですが、僕はこう見えて結構ネガティブなところがあるんです。その自分がよくぞこの道を選択したなあって(笑)」。さらに一歩踏み込めば、自分を動かしたもの、その道を選択させたものはやはり静岡への思いだったような気がする。
「静岡県には飛龍高校や藤枝明誠高校など、バスケが強い高校があり、指導者の方も選手たちもみんな頑張っています。ですが、やはり実力のある選手は、関東や関西の強豪大学へ進学してしまいます。そして、静岡には戻って来ない。僕はバスケをやっている静岡の小学生、中学生、高校生がいつかここ(ベルテックス静岡)に入りたいと思ってもらえるようなチームを作りたいんです。べルテックスでプレーすることが将来の目標になるようなチームを作りたい。そのために僕らが今やらなければならないことは、しっかりとした土台作りです。先ほど、自分は結構ネガティブなところがあると言いましたが、今はとにかく何事にもポジティブな気持ちで取り組んでいこうと思っています。僕は“言霊”というのを信じていて、自分が口にする言葉には魂があると思うんですね。ポジティブな言葉を発していればそれは必ず良いことにつながる、良いことを呼び込んでくれる気がするんです。ゼロから1つひとつ積み上げていくことは想像以上に大変ですが、ポジティブな気持ちで取り組めば毎日が楽しい。今は開幕が待ち遠しいですね。待ち遠しくてすごくワクワクしています!」
プロバスケットボールクラブをつくろう!略して「バスつく!」ベルテックス静岡
今は毎日が大変。でも、毎日が楽しい
part1「多くの人に『べルテックスがある生活』を送ってほしい」
part2「30歳で現役を引退するつもりだった自分が静岡へ」(大石慎之介選手)
part3「静岡の子どもたちが憧れるチームを作りたい」(大石慎之介選手)
文 松原貴実
写真 沼田侑悟