part2「30歳で現役を引退するつもりだった自分が静岡へ」より続く
静岡の子どもたちが憧れるチームを作りたい
選手会長の大石は、同時にチームの顔でもある。『2019.9 B.LEAGUEデビュー!!』という最新のポスターのモデルになり、消防署とコラボした消防団員募集のポスターには消防服を着た大石の写真があった。「今はどんなことでもできることはなんでもやるつもりです」。それがプロである自分の仕事だと思っている。
「新しいチームをスタートさせることはあたりまえですが全てが大変です。スポンサーを募ること、お客さんに来ていただくこと、そのために選手として何ができるかというのは毎日考えています。まずはべルテックス静岡というバスケチームの存在を少しでも多くの人に知ってもらうことですね。僕が今日こうして取材を受けている間にも他の選手たちはクリニックをやっていますし、イベントにも行きます。ポスターを貼りに行くのも街中で配布するのも僕たちの仕事。ポスターを見た人、手渡した人たちが、静岡にはこんなバスケットチームがあるのだと知って応援してくれたら嬉しいですし、イベントやクリニックで選手の顔と名前を覚えてくれればなお嬉しいです」
所属選手紹介の資料を見ると、Bリーグを経験したことのある選手は大石の他に、大澤歩(B2香川ファイブアローズでプレー)、山下颯(B2鹿児島レブナイズ→B2バンビシャス奈良→B3埼玉ブロンコスでプレー)の2名のみ。中には特別指定選手や練習生としてBリーグのチームに籍を置いた選手も数名在籍するが、いずれも短期間でBリーグの舞台を経験したとは言えない。トライアウトで入団した者も含め、その多くが『Bリーグ未経験』ということになる。
「正直B3からスタートするチームにどのぐらいのレベルの選手が集まってくれるのかという不安はありました。ですが、やっぱり僕は大学まで静岡で育ててもらった選手ですから、地元に帰って恩返しをしたいという気持ちが強かったです。だから、今このベルテックス静岡に様々な想いを持って集まった選手で、できる限りのことをやるという思いしかありません。ないものねだりではないですが、足りないものをあれこれ挙げるのではなくて、今は集まった選手が持っているものでベストを尽くす、それが1番大事だと思っています。その中で自分が担う役割、責任はもちろんあります。今までの自分のバスケ人生を振り返ってみると、若いときは上の人に助けられてきたわけです。たくさん助けられて、ここまで成長することができました。そう思ったら次は自分の番。自分が若い選手を助ける番。このチームの若い選手たちに自分が今まで経験してきたことを伝える、教える。それが自分の仕事である常にと思っています。その覚悟を持って、僕はこのチームに来ました」