静岡っ子の網代さんから見た静岡の県民性は「他の県と比べて、少しおとなしいかもしれないです。ですが静岡は、サッカーの街と昔から呼ばれているだけあって清水エスパルスやジュビロ磐田などのJリーグのプロチームもありますし、スポーツ文化は根付いています。実際、エスパルスの後援会に入っている方がうちのイベントに来てくださるケースも少なくないんですよ。サッカーファンでバスケを見たことがない方にも是非観戦して頂きたいです」。ファンクラブの会員をまずは1000人にして、ファン同士のコミュニティを作っていくことが目下の目標だが、そのためにも網代さんが目指すのは『推しのいる生活』だという。
「たとえば猫好きな人が仕事を終えて帰宅して、SNSでかわいい猫の画像や動画を見たら癒されますよね。それは芸能人や動物を問わず、疲れているとき、元気がないとき(自分の)“推しのアイドル”を見てパワーをもらえることって多いと思うんです。だったらそこにバスケットボールがあってもいいじゃないですか。べルテックスというチーム、あるいはべルテックスの選手がその人の“推し”になれば試合を見たり、応援したりすることできっとその人の生活は前より豊かになると思うんですよ。何かを好きになるって、すごくエネルギーを使うことですが、好きになったことで絶対新しい自分に出会えるはずです。だから私はバスケ好きな人はもちろんですけど、これといった趣味がなくて何となく休日を過ごしている人たちにバスケットボール観戦を選択してもらえるようにしたいんです。老若男女を問わず、べルテックスがたくさんの人を楽しませる“推しのチーム”になることが夢です」
新しいチームを立ち上げるということは『前例がない』ということ。バスケットの魅力を伝える営業活動も、企画したイベントを実現させるために奔走することも、全てが『今年初めて』の経験だ。だが、網代さんは言う。「前例がないことは大変ですが、一方で前例にとらわれない自由さがあります。みんなでアイデアを出し合ってとにかくやってみる。社内ではバスケ業界の常識にとらわれないことがルール。やるべきこと仕事はたくさんありますが、みなさんがワクワクしてくれる姿を想像し、スタッフでチャレンジをするのは楽しいです」
チームを率いる後藤祥太ヘッドコーチが目指すのは「攻守一体となって全員で点を取りに行けるチーム。と同時にハードワークやルーズボールに飛び込む泥臭いプレーで魅せるチーム」。それを体現するために選手たちが頑張るならば、それを全力で支えるスタッフでありたい。事務所の壁に貼ってあった『静岡バスケ熱狂元年。』のコピーはスタッフが知恵を絞り、いくつもの候補作の中から選んだものだと聞いた。バスケットで、静岡を日本一ワクワクする街へ。べルテックスが目論む熱狂のシーズンは間もなく幕を開ける。
文 松原貴実
写真 沼田侑悟