「彼らには、勝利にコミットしてくれと話しています。30点を獲らなくても良いから、マッチアップする選手を15点以下に抑えてくれた方が評価は高い。また、周りを生かして日本人選手に20点を獲らせるような活躍をした方が絶対にチームは強くなると伝え、その働きをしてくれています」(志村GM)
シーズン前の現時点ではGrind!を練習場にも貼り、このカルチャーを徹底することができる。だが、シーズンがはじまると根幹になければならないGrind!への意識が薄れてしまう。現役を退いてからまだ2年目の志村GMだからこそ、「得点や結果が欲しいし、このプレータイムでは活躍できないと言い訳するものです。僕もそうでしたから。シーズンが始まると試合に出たいという意識ばかりが先走ってしまい、シュートを決めれば出られると思いがちです。でも、チームスポーツは違うんです」と理解するとともに、その解決策も熟知している。だからこそ「Grind!を徹底すれば良い。それによって絶対に数字も出てきます。プレータイムや結果が欲しければ、ディフェンスをまずがんばろうというのが僕らのコンセプトです。そうすることで安定したプレータイムを得られ、それが信頼を勝ち取る近道です」と明確な基準を打ち出したことで、軌道に乗り始めた。
昨シーズン、負けた試合はGrind!が足りず、勝った試合でも「89ERSのバスケスタイルではないよね」と桶谷大ヘッドコーチとともに、選手たちへ指摘しながらカルチャーを徐々に浸透させていった。終盤に勝ち星が飛躍的に増えたことは、Grind!の大きな成果である。
冒頭で紹介した通り、今シーズンのチーム編成は最高の形で進んでいる。「僕の仕事は、ここからどう動かしていくかが本当の勝負」と志村GMはさらに気合いを込めた。
「シーズン中にもやらなければいけないことは多々あり、本当のカルチャーを作っていくには時間がかかるものです。もしこの職を追われ、僕以外の人が携わってもこのカルチャーが動いていけるようになり、今いるメンバーと一緒に築いてきて良かったなと思えることが大切です。今シーズンのB2優勝とその後のB1優勝という目標がありますが、それよりも一緒にもがきながらカルチャーを作り、選手も89ERSでのプレーしたことで成長できたと実感できるようにしたいです。選手だけではなく、スタッフやファンも一緒になって、89ERSのカルチャーを作っていきたいとも思っています。だからこそ今シーズンは、結果を出さなければいけません。基本的にB2のチームは昇格しなければ全て失敗です。優勝してもB1に上がれなければ意味はなく、昨シーズンは島根だけという結果であり、18チーム中17チームは失敗に終わったわけです。今シーズンはさらに厳しくなると思いますが、楽しみでもあります」(志村GM)
9月28日(土)、ゼビオアリーナ仙台で迎える開幕戦では「Grind!」Tシャツが来場者全員にプレゼントされる。
part3へ続く「仙台在住がサステナブルな復興支援」
文 泉誠一
写真 安井麻実