※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年4月末発行vol.20からの転載
日本代表で活躍する選手を輩出
母体企業のアイシン精機本社がある刈谷市ゆえに、JBL時代から集客力はあった。ファイナルへ勝ち進めば、刈谷市から何台ものバスが連なって代々木体育館へ押し寄せたこともある。Bリーグとなった今、さらなる盛り上がりを見せるシーホース三河の集客数は昨シーズン比14・2%増(2018年3月末現在)。ビジネス面でも着実に成長を遂げている。
「プロになったことで勝つだけではなく、観てる人たちを楽しませなければならない」と鈴木貴美一ヘッドコーチも柔軟に対応する。絶対的な自信を持つハーフコートバスケットだけではなく、スピーディーな展開を今シーズンは採用し、しっかりファンの方を向いていた。はじめてプロとなった昨シーズンは手探り状態だったが、今シーズンは現場サイドの意識も変わりはじめている。
23年間、鈴木ヘッドコーチはシーホースひと筋で開拓を続けてきた。「選手それぞれの役割を全うさせ、お互いの良いところを引き出し合えるチーム力」「失敗と成功を繰り返しながらも実戦を通したゲームの中での成長にこだわりを持ち、年々チーム全体を底上げすること」をコーチングフィロソフィーとして掲げている。2度の日本代表を率いた経験をもとに、もう一つ大事な要素として「日本代表で活躍する選手の輩出」を挙げた。現在の日本のエースは比江島慎であり、かつて在籍していた竹内公輔(現栃木ブレックス)は大黒柱として活躍。代表に送り込むだけではなく、そこで『活躍できる選手』を強調しており、シーホースでの選手育成にも力を注ぐ。
GMとして自ら獲得してきた桜木ジェイアール
1995年、ヘッドコーチ就任とともに、ジェネラルマネージャー(GM)を兼任してきた。
「今までのスタッフも選手も僕が決め、逆にクビにするときも僕が通告し、チームを作ってきました」
ヘッドコーチとして目の前の勝利に向かう一方で、将来を見据えなければならないのがGMの役割である。プロとなった今こそ必要不可欠なポジションだが、まだまだ人手は足りていない。23年前からその役職を据えてきたシーホースだからこそ、常勝軍団へと成長を遂げられた。
今シーズン好調な41才、桜木ジェイアールが日本にやって来たのは2001年。その6年前、大学(UCLA)1年だったジェイアール・ヘンダーソンを鈴木ヘッドコーチは目の前で見ており、「体のバランスが良く、今後どう成長していくのかな」と目をつけていた。その後、NBAドラフト2巡目でグリズリーズへ指名されたが、ディフェンスやフィジカル面での壁にぶつかり長くは続かなかった。活躍の場を求めて進んだフランスリーグでも解雇される。その情報を耳にした鈴木ヘッドコーチは、すぐさまロスへ飛んだ。現地で映像を集め、その場で獲得を決める。
「当時のチームはまだ弱く、点を獲れなかったのでオフェンス能力に長けた選手が欲しかったんです」。