性格的に正反対な『燃える男』の存在感
福岡市立百道中学の頃からともにバスケットを続けてきた先輩、橋本竜馬。比江島とは真逆のような触れるのも憚れる『燃える男』である。比江島から見た橋本先輩はどんな存在なのだろうか?
「一番尊敬しています。情熱を持っている選手であり、常に毎回全力でやらないと気が済まない人です。竜馬さんは常にリーダーシップをとって、自分がやって欲しいことを常に伝えてくれます。何よりもディフェンスでリズムを作ってくれる選手であり、それが今の日本代表にも必要な存在です」
今号が配布されたころには、すでにFIBAワールドカップ アジア予選Window1の結果が出ている。内に秘める情熱はけっして冷めてはいない。焚きつければ自ずと燃え上がり、それが見られるのも国際試合ならではである。
「FIBAワールドカップやオリンピックまでは本当に時間がない。常に全力を出して、シュートを決めていくことで相手も対策をしてきます。そのときこそ、もっともっと新しいステップを生み出していけると思っています。プレー以外の部分もまだまだやらなければいけないことが多くあることは自分自身でも分かっています。それらを含めて、やります!」
枠を越えたい気持ちはあるが…勇気がないのかもしれません
自らの決断で、その枠を越えたときが一度だけあった。2015年7月9日、比江島自身のツイッター(@Hiejima_m6)にて「今からラスベガス行ってきます!」(原文ママ)とつぶやかれた。クリーブランド・キャバリアーズのトレーニングに参加し、NBAサマーリーグ出場を目指す挑戦だったが、爪痕を残すことなく静かに帰国。気がつけば2年の月日が流れていた。もう海外挑戦の情熱は消えてしまったのだろうか?「自分の実力を試したい気持ちはもちろん今でもあります。しかし自ら動いていないし、その勇気もないのかもしれません」というのが今の心境だ。27歳は若くないということも自覚している。だが、NBAや海外の選手たちの活躍を見れば、この年代から脂が乗るちょうど良い時期でもある。
「それは僕も感じていて、30歳からNBAに行く選手もいるわけですし、まだまだ自分にも伸びしろがあり、まだまだ変われるとも思っています。下の世代が台頭してきていますが、その選手たちのためにも自分がもっと上にいかなければならないという責任は感じています」
Bリーグのライバルとして、アルバルク東京の田中大貴と馬場雄大の名を挙げた。渡邊雄太(ジョージ・ワシントン大学4年)や八村塁(ゴンザガ大学2年)とともにプレーすることを楽しみにしており、日本代表合宿では初選出された西田優大(東海大学)のプレーに驚かされた。「すごい選手たちが若い世代にはもっといると思いますし、どんどん日本代表に入ってきてくれたらうれしいですよね」と、ライバルや心強い仲間の台頭を待ち焦がれているようでもある。
有望な後輩たちの道標となるためにも、海外挑戦の必要性を感じている。だが、枠を越えるにはタイミングとコネクションが必要であり、動かなければ何も始まらない。今はFIBAワールドカップ アジア予選があるために動きにくい状況でもある。しかし裏を返せば、国際大会こそ自らの価値を示す最大のチャンスだ。長らく勝てていないフィリピンやNBA選手を擁するオーストラリアを相手に、勝利に導く『比江島ステップ』でアピールし、未来を切り拓いていくしかない。
文 泉誠一
写真 安井麻実、吉田宗彦