フォア ザ チーム賞とはその名のとおりチームのために献身的なプレーを尽くした選手に贈られる賞である。高い能力を持ちながらセルフィシュなプレーに走らず仲間を生かす役割に徹する、苦境の場面では自ら率先して声を上げ仲間を鼓舞する。シーズンを振り返り「コートの中でも外でも、表でも裏でも常にチームを支えてくれた存在」と、チームメイトたちが口を揃えたのがアレックス・カーク(アルバルク東京)とライアン・ロシター(栃木ブレックス)だった。
アレックス・カーク(アルバルク東京)
211cmの高さと走力を併せ持つカークは、タレント軍団と言われるA東京の中の紛れもない“タレント”の1人だが、自分を殺してでもチームプレーに徹する仕事人の印象が強い。身体を張るゴール下はもとより、仲間のためのスクリーナーになり、ボールを回すことでミスマッチを生み出し、チャンスとなれば全力でゴールに走る。昨シーズンは60試合中59試合に先発出場し、平均32.12分プレー。個人ランキングでは突出した数字はないものの得点部門12位(17.2点)、リバウンド部門14位(8.8本)、ブロック部門7位(1.1本)と万遍なく上位に付け、攻守でチームをリードした。「僕たち外国籍のビッグマンにとって重要なのはチームのシステムにいかにフィットするかということだが、アルバルクのシステムは自分に合っていた。日本人選手たちのレベルも高く、みんながすばらしいプレーをすることもラッキーだったと思う」と、本人は謙遜気味に語るが、カークのフォア ザ チームのプレーが2連覇の扉を開く大きな鍵であったことに間違いはない。
ライアン・ロシター(栃木ブレックス)
昨シーズンの栃木はケガ人続出に泣いた時期があったが、ちょうどそのころ訪ねた体育館で数少ないメンバーに声をかけ、練習の士気を上げるロシターの姿が印象的だった。栃木に入団したのは2013年の8月。数えて4シーズン籍を置いたブレックスはロシターにとって最早“ホーム”の感覚なのではなかろうか。「僕がケガから復帰したばかりで不安を感じていたとき、さり気なくアドバイスしてくれたのはライアンだった」と、橋本晃佑が語るように、ホームをともにする“家族”への心配りは忘れない。いざ試合となれば大黒柱として奮闘努力。昨シーズンは平均得点19.8(ランキング8位)、平均リバウンド11.3(同2位)の活躍でチームを東地区2位に引き上げた。チェンピオンシップセミファイナル第1戦(対千葉ジェッツ)でのケガが返す返す悔やまれるが、彼を欠いた第2戦で「ロシターのためにも勝つ」とコートに立ったチームメイトたちの姿に、改めてチームにおけるその存在の大きさを見たような気がする。
映像提供:バスケットLIVE
文 松原貴実
写真 安井麻実・吉田宗彦