長いシーズンを戦い抜いたベテランたちの身体の話
── 60試合は長かった?
竹田 ヤバかった。
網野 俺は見ていて勇気をもらってましたよ。「こんなに動くんだ」「結構出てるな」と思って見てた。でも、タケさんのせいで周りから「なんで復帰しないんですか?」ってメチャクチャ言われた。
── 前回、イートンが「朝起きたときに軽く絶望することが増えた」と言ってたけど、長いシーズンでそれも増えた?
伊藤 もう多かった。絶望度合いも大きくなり、起きたときに「あれ? この状況で運動するのかな」って思うほど。
網野 どういうこと?
伊藤 朝起きて、一歩目を踏み出すときにもうヤバい。
竹田 普段の生活すらもうできないんじゃないかなって思うときがある。
伊藤 きついし、もう治らないしね。
竹田 そう、治らない。回復力が大事。折茂(武彦)さんもそうだけど、やっぱりケガをしない人が長生きする。大口(真洋)さんを見ていてもそう思う。
網野 引退したら、マジで身体の痛いところがなくなった。
伊藤 そうなの?
網野 アキレス腱がずっと痛かったけど、今は何にも痛くない。
竹田 本当にスッキリするよね。昨年、復帰に向けて身体作りをしていたら、ムチャクチャ調子が良かった。痛いところもないし、これはすごいんじゃないって思ったけど、いざバスケットを始めたらやっぱりいろんなところが痛くなる。身体の使い方や姿勢、クセなどもあるんだろうけど、もう付き合っていくしかない。
網野 もう競技する以上はつき合っていくしかないでしょ。
伊藤 でも、段々と自分で治せるようにもなってる。ここをいじって、ここを緩めるとちょっと良くなるみたいな。そういうごまかし方は分かってきた感じ。
タケさんが経験した恐怖体験となる入替戦の話
竹田 シーズン終盤はスタートで使われるようになって、自分の身体自体もいっぱいいっぱいになっていた。でも、泥沼から抜けられない。本当にしがみついている感じだった。何が辛いって、勝ってもこんなにうれしくない試合というのは経験したことがない。特に(B1残留プレーオフ1回戦)秋田戦に勝ったとき、一瞬は喜んだけど、ふと周りを見たらシーンとしていて異様な雰囲気なわけ。複雑な気持ちになったよ。入替戦に勝って良かったねとか、B1残留おめでとうとか言われたけど、その秋田の光景が脳裏を離れないから素直に喜べない。一歩間違っていたら同じ立場だったかもしれないし、入れ替えの残酷さを目の前で見たわけだから、本当に恐い。
網野 それもBリーグができなかったら経験できなかったわけだしね。
竹田 新潟のときにビリになったけど、こんな緊張感はなかった。その恐さを知っているメンバーが今シーズンもほとんど残ったので、それはしっかりつなげないとダメ。この経験をチームが上向いていくためのきっかけにしたい。5年後、10年後、あのときがあったから今があるとなれば良い。
網野 恐ろしいね、Bリーグ。
竹田 恐ろしいよ。軽々しく話せる感じではない。自分だったらと考えちゃうもん。でも、そういう緊張感のある試合は必要。1部と2部の入れ替えもそうだけど、そこから上に位置するチームがさらにレベルアップしていくことの方が大事。そうすれば全体的に良くなっていく。……なんだか、重たい空気になっちゃったね。