強い相手と対峙すれば、スイッチの入りは早い。国内でも熱くなる試合はあるかと聞けば、アルバルク東京戦を挙げた。昨シーズンの天皇杯・準決勝、延長の末に94-87で勝利した試合は「楽しかったし、燃えましたし、昨シーズンの中で一番疲れました」と振り返る。負ければ終わるトーナメントの方が自ずとスイッチが入りやすい。「天皇杯はバチバチになりますね」と楽しみにしていたが、今年は準決勝で千葉ジェッツに敗れ、3位に終わっている。その試合、確かに比江島スイッチは入った。しかし、スイッチを入れるのが後半からだったため、勢いづく千葉を追い上げるまでには至らず、早くも悔しい思いをしている。
下を向いてる暇はない。1月28日・29日、燃えるA東京とのBリーグでの初対戦がホームのウィングアリーナ刈谷で待っている。大学時代からライバルである田中大貴もさることながら、同じポジションのディアンテ・ギャレットとのマッチアップを心待ちにしていた。なかなかレギュラーシーズン中にスイッチを入れることがない比江島だが、天皇杯の悔しさと相まって、この試合は鬼気迫る姿が見られるかもしれない。
勝手にスイッチが入る部分はある!?
「苦しい展開や一本欲しい時に確実に決めたり、ショットクロックがなくなった時にしっかり決めきる選手だったり、本当に勝利に導ける選手がエースの理想」と比江島は言う。では、タレント揃いの三河のエースは誰なのだろうか?「(鈴木貴美一)監督は僕だと言ってくれていますので、心の中では僕だと思いながらやっています。本当に大事な場面は任せてくれているので、その期待には応えたいです」と少なからず自覚を持っていた。
比江島スイッチが入れば国内では敵なし、無双状態に入る。しかしそのスイッチがどこにあり、いつ反応するかは、大学時代の恩師であり、日本代表を率いた長谷川健志氏でも「分からない」と首をかしげる。良い機会なので、スイッチの在りかを本人に直撃するしかない。
「相手が強ければ強いほど、勝手にスイッチは入るという部分はあるとは思うのですが……」
裏を返せば、燃えない相手に対してはついつい集中力を欠いてしまうわけだ?「はい」という素直な返事が返ってきた。決して、悪気があるわけではない。
期待が高いからこそ、スイッチが入った鬼気迫る凄さを目の当たりにしてきたからこそ、常に最高のパフォーマンスが見たい。だが、原稿を書き始めていた大晦日のラジオから聞こえてきたクリス・ペプラーさんの言葉が溜飲を下げてくれた。 『良いものには触発され、勝手にスイッチを入れてくれるものだ』
スイッチが入らない比江島が悪いのではない。本気にさせる相手がいない現状がいけないのだ。天皇杯準決勝の千葉戦は、スイッチを入れることができた。チャンピオンシップまで勝ち進めば自ずとスイッチは入るだろう。だが、始まったばかりのBリーグのシーズン中から比江島を熱くさせるライバルの台頭が急がれる。
アイツのスイッチを押すのは誰だ!?
文・写真 泉誠一