※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年1月末発行vol.5からの転載
「比江島スイッチ」という言葉をご存じだろうか? 独特なリズムのドライブから相手をかわし、次々とゴールを奪っていく、日本人離れしたセンスを持つシーホース三河の比江島慎。そのスイッチが入ったかどうかが、比江島のプレーに対する関心事の一つでもある。取材を行った12月18日の三遠ネオフェニックス戦では22点を挙げた。しかし、スイッチが入った時のような鬼気迫る凄さは感じられない。
「今日はノビノビやろうと思ってました。金丸さんもいないですし、点を獲ることを意識していました」
シューターの金丸晃輔が不在だったこともあり、得点を獲らなければならないという責任感はあったようだ。言葉通りノビノビとプレーし、何よりも楽しそうだった。逆に言えば、スイッチが入らなくても、これくらいは簡単にできてしまう。
比江島スイッチは、青山学院時代から言われ始めていた。大学3年次のインカレ決勝、逆転されて迎えた後半、比江島が自ら打開し、同点に追いつくダンクでさらにチームを勢いづける。77-66で勝利し、2連覇を達成。あの時の比江島を例えるならば、スラムダンクの流川楓や仙道彰のようだった。マンガを見ているような活躍ぶりに胸を躍らされたものだ。
Bリーグで燃えるライバルはアルバルク東京
トップリーグに進み、今年で4年目。「国内では余裕を持ってプレーできるようになりましたし、攻撃パターンも少しは増えています。また、アウトサイドシュートの確率も少しは良くなってきていると思います」と自身の成長に手応えを感じている。
さらなる課題点を挙げてもらえば、「もっともっとガムシャラにやるってことですかね」。分かっているなら、やりなさい! と言いたい気持ちを抑える。一問一答丁寧に答える比江島に悪気はない。
世界への切符を掴んだ2015年のアジア選手権で、日本代表のエースとしてようやく覚醒した。「日本代表戦であれば、全部と言って良いほど(エースの)自覚を持って戦っています」と期待している我々を喜ばせる言葉が出てくる。意外だったのは、「フィリピンの時が一番その思いが強かったんですけど、勝たせられなかったのでダメですね」と、初めて日本代表としてアジア選手権に出場した2013年の時点で、エースの自覚を持っていたことだ。それは全く知らなかった。