── プレー面、メンタル面で自分の変化を感じることはありますか?
そこまで大きな変化というのはわかりづらいですが、間違いなく余裕は出てきたと思います。昔のビデオを見ていても「なんでそんなプレーしてるの?」と自分に突っ込むこともありますし(笑)。そういうのを見ると少しは成長できているのかなとは感じます。
メンタル面でもそうですね。いろんな経験を通して少しは成長できているんじゃないでしょうか。ただ昔からどんなことよりバスケットを優先するという気持ちに変わりはありません。昔も今も少しでもバスケットに(悪い)影響が出るようなことはやらないようにしています。
── どんな誘惑にも負けませんか?たとえば友だちと飲みに行って、明日の練習に影響するかな?と思いつつ楽しさに負けて夜更かししてしまうとか。
そりゃ楽しいことはやりたいですけど(笑)、それでも自分の中の優先順位は絶対的にバスケットが1位ですから、涙を飲んで帰りますね(笑)
── バスケットの神様が何か1つだけプレゼントしてくれるとしたら何を望みますか?
う~ん、なんでもいいんですか? う~ん…1つだけですよね。そうしたら「疲れない体をください」と言います。
── 試合はもちろん、コートの外でも忙しいから疲れは溜まりますね。どんなことで気分転換するのですか?
友だちと会ったり、おいしいものを食べに行ったり、映画を見に行ったり。最近では織田裕二さんの『僕の何チャラ』(『ボクの妻と結婚してください。』)を見て感動しました。映画は誰かが「おもしろかったよ」というのを見に行きます。そういうとこはすぐ影響されるタイプです(笑)
── 疲れることはあっても上手に気分転換して、今年、田中さんが目指すものは何ですか?
タイトルが欲しいです。優勝したいです。今年のアルバルクは能力が高い選手が揃っているので、これからチームとしてもっと良くなる要素は大きいと思っています。チーム力という意味では、同じメンバーで長くやっている川崎(ブレイブサンダース)や栃木(ブレックス)の方が今は正直ちょっと上かなと思いますけど、伸びしろは自分たちの方が大きいと感じているのでもっと成長していきたいですね。自分はそれを引っ張る存在でありたいと思います。
年が明けて開催された全日本総合選手権(オールジャパン)でA東京は準決勝で川崎に敗れ、田中の「初のタイトル奪取」の夢は叶わなかった。だが、敗戦後の表情に暗さがなかったのは、自分が課した「最後までゴールに向かう姿勢」を貫いた実感があったからだろう。3位のチームから唯一大会ベスト5に選出されたが、田中の気持ちはすでに次に向かっていた。「この悔しさはリーグ戦で晴らします」――自分のミッションはチームを優勝させること。それを達成できたとき、初めて真の『エース』に成れるのだと思っている。
文 松原貴実
写真 安井麻実