※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2017年1月末発行vol.5からの転載
昨秋、B.LEAGUEが開幕して以来、いや、正しくはB.LEAGUEの発足が決定して以来、田中大貴は新たな『リーグの顔』としてさまざまなメディアに取り上げられてきた。シャイで人見知りの田中にとって「取材は大の苦手分野」だが、それでも数多くの取材を厭わないのは、今自分が置かれた状況や立場を理解しているからだ。「バスケットを盛り上げるためなら、自分ができることは何でもしたいと思っています」――きっぱり言い切る顔に『日本のエース』という呼び名が重なった。
── Bリーグが発足したことで自分の中で変化したことはありますか?
まず開幕戦を戦わせてもらったことが大きかったと思います。あんな雰囲気の中でコートに立つのは初めてだったし、ものすごく高揚して鳥肌が立ちました。あの雰囲気を体感できたことは本当に幸せだったと思います。 けど、同時に『体感できた者』としての責任も感じました。注目された分、チームとしても個人としても頑張らなきゃいけないというか、リーグを引っ張っていく存在にならなければいけない思いがあります。
── 今シーズンのアルバルク東京はメンバーが大きく入れ替わり、竹内譲次、元NBA選手のディアンテ・ギャレットなど有力選手の加入に注目が集まりました。その中で自分が『エース』と呼ばれることについてどう思っていますか?
僕はアルバルクで3年目を迎えますが、入ったときからそういうこと(エースと呼ばれる)を言われていました。最初は周りが言うことだから…とあまり気にならなかったんですが、優勝できずに2年間が終わったとき、自分に対する不甲斐なさを感じました。チームを勝たせてこそエースじゃないですか。
── それが田中さんが考えるエースですか?
そうですね。もちろんスコアラーと呼ばれる選手、3ポイントシュートがうまい選手、大事な場面を任される選手、エースという位置付けはいろいろあるかもしれませんが、自分の中のイメージは『チームを勝たせられる選手』です。
たとえば自分が不調のときでも周りを生かすことができて、周りに気持ちよくプレーさせてあげられるレベルにある選手。今、日本でそれができるのは田臥(勇太・栃木ブレックス)さんぐらいだと自分は思っています。田臥さん自体はそれほど点数は取らないんですけど、味方を本当にうまく生かしていますよね。周りをいい方向に誘導してチームを勝たせることができる人です。それが本当のエースじゃないかと自分は思います。
── 田中さん自身はそういったところがまだ力不足だと感じているのですか?
チームの中で1番出場時間が長く、求められているものも大きいのに2年間優勝に牽引できなかったことは、やはり力不足ということでしょう。
── 判断力の良さやパスのうまさには定評がありますが。
どんな展開になっても冷静さを失わずにやれるということには自信を持っています。ただこれまで自分には今1つ『貪欲さ』が足りなかったと感じていて、『もっと欲を出すこと』を今年の目標にしました。自分がエースかどうかという前に自分がやらなくてはいけないことをやる、果敢にゴールに向かう、その自覚を持って戦っていきたいと思っています。そういう1年にしたいです。
── 昨年末(12月24日)の川崎ブレイブサンダース戦ではその気持ちが表れていたように思います。第2クォーター終盤、わずか3分間で 17点を連取しました。
もちろんあれはシュートが入ったということもありますけど、3分間で17点取ったのはそれぐらいゴールにアタックしたということなので、自分的にはそのことがよかったと思っています。でも、決してあれで終わりじゃないですし、自分はもっともっとできるはずだと思っているのでその上を行く積極性を発揮したいですね。