※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2016年11月末発行vol.3からの転載
Bリーグ元年、3年間の単身赴任を解いて、地元・大阪に戻ってきた木下博之。36歳となったリーグ屈指の司令塔は、その円熟味を増している。 一方のチームはbjリーグ創成期に3連覇を達成したものの、以降頂点からは遠のいている。若返ったチームを再び頂点に引き上げようと、浪速のベテランガードは日々奮闘している。
── Bリーグ元年、日立(現サンロッカーズ渋谷)から大阪エヴェッサに移籍しました。移籍を決断した理由は?
地元である大阪のチームから声がかかったことが何よりも大きかったです。GMもパナソニック時代にお世話になっていた清水(良規)さんだったし、家族も大阪に住んでいるので……。和歌山時代から3年、単身赴任だったんです。こどもも小さいし、大阪に戻ってプレーできるのであれば、大阪に戻ろうと。声を掛けていただいたチームが大阪でなかったら、たぶん渋谷でプレーを続けていたと思います。
── 実際に移籍してみて、大阪エヴェッサはいかがですか?
若いですね。いい意味でも悪い意味でもまだバスケットをわかっていません。もちろんわかっていないことを試合で活かすこともできるのですが、今はそうした段階でもなく、まだこれからの段階だと。
── だからこそ経験値の多い木下選手が必要になる。
チームメイトには気になるところを常日頃から伝えています。桶谷(大)ヘッドコーチにも最初に会ったときに「おそらくいろんなことを言うと思います。本来ならヘッドコーチの仕事であることはわかっていますが、練習中に気になって、言いたいことが出てくれば、その場で言うことが多くなると思います。そこは許してください」と伝えました。
── 桶谷ヘッドコーチは何と?
「ぜひやってくれ」と。もちろん僕が「言いすぎていると思ったら、止めてください」とも言いましたが、それでも僕が伝えられるところはたくさんあると思いますから。
── 清水GMは歯に衣着せぬ物言いをする方ですから、「(大阪エヴェッサに限らず、全体的に)今の若い選手たちはバスケットが下手だ」とバッサリと斬りました。その言わんとすることはわかりますか?
はい。コートの使い方や人の使い方、スクリーンの使い方が下手という意味ではないかと思います。どんなに身体能力が高くても、スペースがなければ攻めることはできませんし、そのスペースの作り方や、自分を活かす方法を知らない。そういうところが下手だと言いたいのだと思います。
── そのせいでしょうか、今シーズンのスタッツを見ると、木下選手の得点がけっして多くありません。木下選手のイメージは「得点の取れる、攻撃的なポイントガード」だったのですが、あえてコントロールして、若手にバスケットの本質を教えているのですか?
僕が今、ガンガン攻めてしまったら、若手の成長はないんじゃないかなって思います。また長いシーズンを通して大阪エヴェッサがどうすれば強くなるかを考えたときに、僕の得点ではなくて、周りの成長こそがリーグ戦の終盤に求められることなんじゃないかなって思うんです。僕が今ここで平均20 得点を取って、終盤になってそれが取れなくなってきたときに、若手の成長がなければチームとして終盤に勝てなくなるんじゃないか。だから今は極力、若手……僕以外の選手が得点を取れるように意識しています。彼らも得点を取れれば嬉しいだろうし、うまくいったことに対しての成長を自分自身で感じられることがステップアップにもつながると思いますから。