46歳、突出した折茂武彦の存在感
── 伊藤選手は引退を考えたことはなかった?
伊藤 常に折茂(武彦/レバンガ北海道)さんが現役でいるからなぁ。毎練習後、ここから10 年先も現役を続けるのかぁ、と想像してみるんだけど、その辛さに参る。朝起きたときに、軽く絶望することがやっぱり多くなってきてる。それでも、チームに必要だと言ってもらえているうちはがんばりたい。逆に言えば、引退はいつも見え隠れしている。
竹田 折茂さんは46歳の今でも現役だし、そういう突き抜けたモノを目指したいし、「あいつやっぱりバカだよね」って言われるくらいのことをしていきたい。チームの戦力になることが大前提だけど、ムチャクチャにしたいですよ。常識を逸脱した選手が日本バスケ界にいっぱい出てこないと、今までの殻は破れない。アジアで1位になるためには、そういうカオスが生まれてくるようなリーグにしたい。こうして現役に戻ったわけだから、今のうちにできることを思いついた限りやりきりたい……あれ、大丈夫ですか?意味は通じてますか?
伊藤 昔ほどではないけれど、日本は国柄的にキャラクターが飛び抜けることを良しとしない部分がまだある。親になって感じるのは、ある程度は常識の範囲内で行動しなければならないことがいろんなところで起きてくる。だけど、その常識を破っていかないと得られないこともたくさんある。そういうことでしょ?
竹田 はい、ありがとうございます。本当に今までどおりやってたって、日本が勝てるようにならないんだもん。今までと違うことをやらないと世界では勝てないし、リーグ全体のレベルも上がっていかないんじゃないかな。
伊藤 飛び抜けても、失敗しても良いんだっていうことを示すことが大事。そうすることで若い選手が続いてくれると良いね。
竹田 オレはこれまでいろいろ失敗してきたからね。だから今はやり直している感じ。
伊藤 山の登り方と同じで、いろんな越え方があることに気づいて欲しい。一生懸命やっていれば、誰かが絶対に手伝ってくれるよ。
積極的に裾野拡大! 競技レベル向上!
竹田 そんな伊藤さんの今後の目標は?
伊藤 伊藤さんはね、子供たちへのクリニックのとき、「積極的に」というメッセージを発するようにしてる。積極的に取りにいく姿勢でいれば、バスケだけに限らず、人生が少しだけ良い方向に向かってくれるんじゃないかなって思ってる。バスケの裾野を広げながら、そのメッセージを伝えていきたい。そのためにも失敗しようが、成功しようが、全部を出し切ってプレイしているんだというのを見せることしかできない。それがBリーグの活性化につながるのかな。
竹田 5年先、10年先を考えたとき、どれだけ競技レベルを上げられるかを現場の人たちが早急にやっていかなければならない。今はBリーグができて、いろんな人に見られている状況だけど、おもしろさがなかったら飽きられてしまう。そのおもしろさはハデさとかではなく、バスケットの競技としての楽しさを伝えられるくらいのレベルになっていかないと飽きられてしまう危機感がある。
伊藤 本当にそこに尽きる。リーグを始めるところまではいろんな方に尽力してもらったので、メインコンテンツである選手たちがしっかりしたプレイを提供していくしかない。選手であるうちは、一人でも多くの子どもたちに自分を見せて、憧れて、目指してもらえるような存在になることが今後のストーリーだね。今までは夢に思ってもつながっていなかったプロバスケ選手への道が、今回こそしっかりとつながったわけだから、それを子どもたちにちゃんと説明できるようになりたい。それが一番手っ取り早いかな。
── いつ引退しても悔いを残さないためにも日々全力投球してください。そうしないと復帰してしまうので(笑)。
竹田 いやいや、出し切ってたんスよ。
伊藤 飽きたんでしょ。
竹田 いや、本当に出し切ってたって!
そして延長戦に続く……
延長戦(前編)「楽しかった日本代表時代の遠征話」
延長戦(後編)「コーチとベテランの距離関係」
文 泉誠一
写真 バスケットボールスピリッツ編集部