※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2016年11月末発行vol.3からの転載
昨シーズンはWJBLデンソーアイリスのアシスタントコーチをしていた竹田謙が、38歳にして電撃復帰を果たした。1つ下の後輩であり、2008〜2013年までともに栃木ブレックスで戦ったチームメイトの伊藤俊亮は、4つ目のクラブとなる千葉ジェッツに移籍。日本代表経験も豊富なベテランたちは今、未来を考えて新たなるB.LEAGUEの舞台で戦っている。シーズン中にも関わらず、二人の友情によるクラブを越えた対談が実現した。
1年前、復帰の引き金となった女子力
── 竹田選手が2年前に引退を決意した理由は?
伊藤 ハム(ストリング)が悲鳴を上げてたとか?
竹田 いや、体じゃないんだよね。最後はキャプテンだったことの責任感もあって、プレイオフ進出はマストだと思ってた。それを一つ達成できたことで気持ちの部分で切れたのもあったかもしれない。あとは、シーズン前にリトアニア遠征があり、そこで「すんげぇ〜」っていうのもあった。自分の年やいろんなことを考えて、これ以上は選手としてアイツらに勝てるようにはなれないな、と思ったのも結構大きかった。
伊藤 全く相談はなく、「あっ、辞めやがった」と思ってた。
竹田 その後すぐに「名古屋に来やがった(※昨シーズン、伊藤選手は名古屋ダイヤモンドドルフィンズでプレイし、同じ愛知にデンソーも拠点を持つ)」と思ったでしょ?
伊藤 そうだね。そしたら、あっという間に名古屋からいなくなって復帰してた。
竹田 リーグが一つになって受け皿が広がったという意味でのタイミングは良かった。Bリーグができたことでマネジメントの部分は整備されたので、バスケの本質である技術向上に向けて、選手や現場にいる人がやらなければいけないことがあるな、と思った。
伊藤 個人的な印象は、ある程度やってきたことで選手でいることに飽きて、一回辞めて…。
竹田 ひでぇーこと言うな。
伊藤 それから女子のコーチに就き、選手とコーチの両面から現場を見たことで、やり残したことがあると思って帰ってきたんじゃないかなって思うけど。
竹田 まさにそのとおり! 女子は「すげぇー」と思った。時間的にも犠牲にしているモノはすごく多い。ある選手に、「男は子供できてもプレイできるから良いですね」とポロッと言われた。人生の選択肢を狭めてバスケットに打ち込んでいて、チームに対する自己犠牲や全てにおいて、女子の方がレベルは上だった。それが、そのまま日本代表の結果につながってると思う。でも、復帰するのは簡単ではなく、「ちょっと待てよ、お前はいくつだ?」という自問自答もあったよ。それらも含めてもう一回チャレンジすれば、また何か得られるモノがあると思ったわけ。コーチと選手の二つの視野を持って選手に戻ったらどうなるかという好奇心が強かった。復帰した動機としては、いろんな思いが重なって今に至るって感じ。
── 引退した選手に対して、クラブ側からオファーがあるの? 自分から売りこんでいくの? 復帰するってどういうことなの?
竹田 あのね、噂の力ってすごい。復帰するって噂を聞いただけで、お話をいただいたクラブもあった。
伊藤 確かに復帰することは、風の噂でフワ〜って飛んできてた。アイリスの公式サイトで辞めることが発表される前には、噂自体はちゃんとできあがってたよ。