地域の人たちに必要とされ、愛され、皆様に元気を与えることが全て
オフィスには『観客動員数日本一』の目標が掲げられ、北海きたえーるでの開幕戦には6105人を集めた。「北海道のマスコミの方々は野球、サッカーと同じような扱いで取り上げてくれる。ファイターズとコンサドーレの成功例があるので、非常にスポーツを見る目がある人も多い」と地の利を挙げる。目指すべきミッションは変わることなく『地域密着』。「地域の人たちに必要とされ、愛され、皆様に元気を与えることが全て」と語る折茂代表。しかし、それを知ったのも北海道に来てからの話である。トヨタ時代は「100%自分のため、お金をもらうためにしかバスケをしていなかった」わけであり、ファンサービスも「面倒くさい」と一蹴。北海道に移籍したばかりのときも、その考えは抜けなかった。
当初は万年最下位争いだったが、観客動員数は断トツでリーグトップ。「毎回多くのファンが会場に来てくれて、あんなに負けていてもけなされたことは一度もない。むしろ、北海道に来てくれてありがとうって言われちゃうんだから。それを聞いたとき、この人たちのために真剣にがんばらないとダメだ」と意識を変えた瞬間からプロ選手になった。
経営難に陥ったとき、身銭を切って北海道のプロクラブを存続させる男気を見せたのも、道民たちが折茂さんを変えさせたからに他ならない。今では北海道の選手全員が、ファンとスポンサーのおかげでバスケができていることを理解し、率先して地域密着に勤しんでいる。
地域密着の徹底以外、選手たちに対しては良い意味で放任主義。「プロなのでそれぞれで良い。空いた時間は自由。その代わり、責任は全て自分にあるのもプロ」。最低限の決まり事は守って当然だが、それ以外は選手の自主性に任せている。「僕のシュートフォームを真似したらシュートが入るなんていうのは大間違い。骨格や筋肉量が違うし、感覚も違う。自分の打ちやすい場所から打てば良く、あとは全て感覚の問題。何をすべきかは自分で見つけなければいけない」。その方針は、どんな形であれ決めれば良いシューター気質と言えよう。
どこが辞め時なのかは、もう自分では分からない
アスリートとしてやるべきトレーニングに初めて取り組んだことで、引退時期は確実に遠のいた。折茂さん自身も、「どこが辞め時なのかはもう自分では分からない」そうだ。一方、クラブ代表については、「このチームを残した時点で、自分のものだとか、自分でなんとかしようということは全く思ってない。このチームに思いがあって、いろんなことが分かる方であれば僕がやる必要はない」と固執していない。
常に言ってるのは「戦力であり続けることが一番重要」であり、コートに立ち続けることが今の目標だ。「練習中に使い倒してケガしたら、オレはそこで引退しても良い。試合でケガして、引退に追い込まれても構わない。責任は自分で取る」と水野宏太ヘッドコーチにも伝えている。
コートに立てば全力で走り、シュートを決め続け、通算9000点(11月6日時点で8961点)が間近に迫る。安定したクラブ運営を目指してシーズン中も奔走し、様々な決断を下す日々。今日も折茂さんは全身全霊を懸けて、北海道を前進させている。
文 泉誠一
写真 五十嵐洋志