マイケル・パーカーのダンクで返された直後のオフェンスでも竹内は再び3ポイントシュートを沈めた。
「二発目はいつも僕たちがやっているペイントタッチからのプレーで、馬場がいいドライブをしてマークを寄せてくれたので、そこも決まってよかったです」
この、チームの精神的支柱ともいえる竹内の2本の3ポイントシュートから徐々に流れはA東京へと傾いていく。田中の連続得点に、安藤の3ポイントシュート。バランスキーの3ポイントシュートや、小島元基のルーズボールから最後はミルコ・ビエリツァの3ポイントシュートまで飛び出し、第3クォーターだけを見ると29-12、トータルスコアでも64-45と大きくリードを広げた。
第4クォーターは千葉の猛反撃を受け、10分間で7-22と大差をつけられたが、第3クォーターの“貯金”を使い切ることなく、71-67で逃げ切り、A東京がB.LEAGUE初の連覇を達成した。
A東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは竹内の2本の3ポイントシュートについて、こう言っている。
「千葉のディフェンスはいろんなリスクを負いながら、オーバーヘルプなどをしてくるので、どこからヘルプが来るのか、それが見えるようにオフェンスの練習をしてきました。また選手たちには悔いのないシュートを打ちなさいと伝えていますので、あの場面では譲次が思い切って打った結果、2本沈めることができたかなと思っています」
その一方でパヴィチェヴィッチヘッドコーチはこうも言っている。
「譲次の3ポイントシュートは流れを呼ぶビッグショットでしたが、それ以前に我々のディフェンスが千葉のトランジション、リバウンド、富樫選手のピック&ロール、エドワーズ選手のポストプレーをしっかり抑えるなどタイトになったことで、相手のオフェンスをプレーさせない時間帯があって、リードを広げることができました。譲次の2本の3ポイントシュートも大きかったけど、同時に我々のディフェンスがリードを広げる要因になったと思います」
それは竹内自身も認めるところで、「こういう試合ではディフェンスとリバウンドが重要だと思っていたので、3ポイントシュートについては“おまけ”かなと思っています。リバウンドゲームで勝てたとは言わないけど、勝ちゲームを作れたことが一番うれしいです」
勝敗を分けたポイントは確かにディフェンスとリバウンドだっただろう。しかしそれらは両チームがともにスタイルの根幹に置くべきものである。取っている戦術は違っても、ディフェンスとリバウンドに重点を置いたチーム作りは、その考え方において同じといってもいい。
ディフェンスやリバウンドで高いレベルを求められるチーム同士の戦いであれば、一本のシュートが流れを変えたり、もしくは流れを生み出したりすることもある。この試合では竹内の2本の3ポイントシュートがゲームの流れを作った。それに田中や安藤らが乗り、第4クォーターの千葉による怒涛の反撃シーンを生み出し、さらにファイナルMVPに輝いた馬場の、千葉の反撃を押し返す気持ちを引き出した。竹内の2本の3ポイントシュートがなければ――スポーツに「たられば」はタブーだが――B.LEAGUE 2018-19シーズンのファイナルのようなゲーム展開はなかったのである。
勝敗を分けるような重要さは含まれていなかったかもしれない。しかし勝敗を分けるポイントとなったA東京のディフェンスやリバウンドと同じように、ゲームが動き出す“きっかけ”を作った竹内譲次の2本の3ポイントシュートも、けっして忘れてはならないシーンである。
文 三上太
写真 安井麻実・吉田宗彦・B.LEAGUE