何事にも“きっかけ”はある。
B.LEAGUE 2018-19シーズンのファイナルのそれは、第3クォーターの冒頭にアルバルク東京の竹内譲次が決めた2本の3ポイントシュートではなかったか。
序盤はA東京がやや優勢にゲームを進めていた。しかし徐々に千葉ジェッツのディフェンスがA東京のオフェンスを狂わし始め、オフェンスでは富樫勇樹がスクリーンを巧みに使いながら、得点を重ねていく。その結果、最初の10分が終わった時点ではA東京の16点に対し千葉は15点だった。
第2クォーターに入っても最初の2分半は千葉のディフェンスが機能し、A東京に得点を与えない。オフェンスでは田口成浩が気炎を吐いて、このクォーターだけで14得点を挙げている。一度は逆転されたA東京だったが、田中大貴の2本の3ポイントシュート、馬場雄大のバスケットカウントなどで追い上げ、ザック・バランスキーの3ポイントシュートで同点、安藤誓哉のドライブで逆転し、35-33で前半を折り返す。
前半を見る限り、両チームに力の差はない。お互いの特長を知り合う両チームが、自分たちの特長を出そうとしながらも、一方でそれを消されて抜け出すことができない。両チームが試合前に思い描いていたようなタフなゲームがそこにはあった。
しかし15分のハーフタイムを挟んだ第3クォーターにゲームは動き出す。最初のオフェンスで竹内は馬場にスクリーンをかけたあと3ポイントラインの外側に移動した。
「後半が一発目、千葉がディフェンスを(マッチアップゾーンに)変えてきて、そこで千葉のマークのずれから自分が空いたんです。後半一本目だったし、思い切って打って、それが入ってよかったです」
今シーズンのA東京は相手チームのゾーンとマンツーマンを併用したディフェンスに手こずる時期があった。しかしレギュラーシーズンを通して得た教訓がファイナルで生かされた。竹内は言う。
「ウチはどこのチームにも対策されますし、いろんなディフェンスでウチのゲームをつぶしてきたんですけど、それに対抗できる戦術をコーチ陣、または選手が学んだことによって、今のところ相手がどんなシステムで守ってこようとそれを乗り越えるだけの共通意識を持つことができたのかなと思います」
千葉の変化に対してもコート上の5人が素早く対応し、その流れのなかで竹内は3ポイントシュートを打ったというわけである。