── 今シーズンは比江島慎選手がオーストラリアでプレーすることになりました。個人的には親しい間柄であり、一方で次代のエースとして常にライバル視されてきた彼の海外進出についてどんな感想を持っていますか?
オーストラリアのレベルが高いことは知っていますし、そこで自分を磨くというのは1つの選択肢だと思います。その道を選んだ彼には素直に頑張ってほしい。だけど、周りからおまえも刺激を受けたんじゃないかとか、次はおまえの番だろうとか言われると、うーん、ちょっと違いますね。それは周りの人の意見であって、言い方は悪いですけど、自分のことは周りの人より自分の方がわかっているつもりなので。
── 仮に海外に出るとしてもその時期は自分で決めるのでほっといてくれと(笑)
ハハハハ…まあ直接そうは言いませんけど(笑)。どう言えばいいんだろ。あたりまえですが、高いレベルのところでやりたいっていう気持ちはあります。けど、何て言うか、こういうことを言うと「守りに入ってる」と捉える人もいるかもしれませんが、自分はわりと現実的な考え方をしてるんです。レベルの高い環境で揉まれることはもちろんいいことでしょうが、仮にコートに立てるのが毎試合10分しかなくて、それが1年間続くとしたら自分にとってプラスと言えるだろうか? とか。2年後の東京オリンピックのことを考えたら(今、海外に出ることは)自分にとってちょっとリスクが高い気がします。そのことはルカとも結構話しているんですよ。それも自分の中では大きくて、ルカはこれまでもいくつもの強豪チームを指揮してきたコーチだし、彼の下でなら自分はもっと成長できると思うんです。だから今はここで頑張りたいですね。
── 『頂点に立った』という経験は今シーズンの自分を変えると思いますか?
優勝できたことで、自分の中に多少余裕ができたのは確かです。あまり余計なことを考えなくてよくなった分、少し楽になったかもしれません。だけど、自分が置かれている立場や責任の重さは変わらないし、その自覚は間違いなく以前より強くなっていると言えます。
── 今年は2連覇を狙うシーズンになりますね。
自分はそういうのはあまり意識してないんですよ。去年は去年で終わったこと。ルカもよく言うんですが、自分たちが勝ち取ったタイトルはもうどのチームも奪えないのだから、守る必要はない、今年はまた新たにタイトルを取りに行こうと。だから、シーズンが始まる前の気持ちは去年と同じです。2連覇のプレッシャーも感じてないし、逆に今年はどんな戦い方ができるんだろうと、開幕を楽しみにしている自分がいます。
── 最後に今シーズンへの抱負を聞かせてください。
昨シーズン優勝はしましたが、当然、個人としてもチームとしても完璧だったとは思っていません。満足してるわけでもありません。ただ全員で頑張って、ああいう精度のバスケができれば頂点に行けるんだということはわかったので、その精度を上げていくことが目標になります。正直、自分は去年の優勝はシステムや戦術といった意味でルカの力が大きいと思ってるんですよ。周りが対策を練ってくるであろう今年は、その分自分たち選手の力が試されるシーズンになると思います。個人的にはさらに貪欲にゴールを目指したいですね。自分の中にはまだいっぱい課題があるので、そのレベルアップに努めたいです。このメンバー、このチームなら必ず去年より上に行けるはず、自分たちが成長すればまたタイトルに近づけるはずだと信じています。
文 松原貴実
写真 安井麻実