※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年9月末発行vol.25からの転載
昨シーズン、田中大貴はプロ4年目にして初のリーグ優勝という栄冠を手にした。エースとしての喜びと安堵を感じたあの日。だが、振り返ればそれも1つの通過点だ。もっと賢く、もっと強く、もっと貪欲に…「進化するエース」を求める田中の新シーズンが始まる。
── 念願のリーグ優勝を手にした昨シーズンは喜びもひとしおだったと思いますが、改めてどんなシーズンだったか振り返っていただけますか。
個人的には「自分がダメならチームもダメになる」ぐらいの覚悟を持って臨んだシーズンでした。リーグ終盤にさしかかったとき、けが人が相次いだこともあり(東地区の首位から)2位に落ちてしまったんですけど、自分的にはそれほどダメージはなくて、これで全員揃ったらいい方向に行くんじゃないかと思っていました。ルカ(パヴィチェヴィッチヘッドコーチ)の言うことを徹底してこういうバスケットをすれば勝てるというイメージが自分の中にあったんだと思います。
── 『ルカHCの練習は厳しい』と、よく耳にしますが。
確かに厳しいですよ。ただ『厳しい』っていうと単に体力的にしんどいことを想像する人が多いと思うんですよ。もちろん体力的にもしんどいはしんどいんですけど、本当の意味での厳しさっていうのは、その中でルカが求めているレベルの高さにあると思います。僕たちはそれに応えていかなきゃならない。たとえほんのちょっとした小さなことでもルカは絶対見逃しませんから。「それぐらいいいや」と流したりしないんです。
── できるまで妥協しない?
はい、徹底してます。「ここまでやるか?」と思うぐらいの準備を求められますね。たとえばボールをもらう位置、高さについても細かく指導されますし、ずれていればその場ですぐ指摘されます。〝プレーの質〟については本当に厳しいコーチですよ。でも、プレーそのものについては「何をやっちゃいけない」とはあまり言わないんですね。常にこうした方がいいというアドバイスはしてくれますが、コートに立ったら自分の判断に任せてくれます。
── 優勝したことで味わったもの、得たものはなんでしょう?
自分が初めて手にしたタイトルですから、頑張ってよかったという達成感はもちろんありましたが、それよりもまず感じたのは安堵感かな。少し肩の荷が下りたという思いが強かったです。もし、優勝を逃していたとしても自分たちがこれまでやってきたことが間違いだったとは思わないですけど、結果が出なかったことについては何が悪かったんだろう、何が足りなかったんだろうといろいろ考えたと思うんですよ。でも、優勝できたことで勝ち方を知ることができたというか、今までやってきたことを積み重ねていけばこういう結果が出るという、1つの道筋みたいなものが見えた気がします。それを見られたことは自分にとってもチームにとっても大きかった。それぞれの自信につながったと思います。