part2より続く
日本一のエースになるために
2019年3月17日、千葉ポートアリーナでおこなわれた千葉ジェッツ戦。シーホース三河の岡田侑大は5得点に終わっている。前日の試合は3得点だった。その2週間前からスタメンに抜擢され、以降5試合、ディフェンスに定評のある栃木ブレックスを相手にしたときも含め毎試合2ケタ得点を記録していた岡田にすれば、改めてプロの壁を痛感させられる試合となった。試合後、岡田はこう言っている。
「(13日におこなわれた)三遠(ネオフェニックス)戦が調子よかっただけに今節にかける思いというか、調子も上がっていくかなと思っていたので、ボールが欲しい、欲しいとなってしまいました。メンタル的にもまだまだ子どもなところがあって、ボールをもらえなかったときに足が止まってしまいました。オフェンスからの悪循環でディフェンスもうまくいかなくなって……そこは課題ですよね」
このとき岡田にマッチアップしていたのはリーグでもトップクラスのディフェンス力を持つ石井講祐とトレイ・ジョーンズだった。これまで岡田は自分が有利な状態でドライブをすれば、ファウルをされることもなくフィニッシュまで行けていた。しかし石井やジョーンズは最後の最後まで手を伸ばしてくる。その執拗さに手を焼き、最後まで自分のリズムでプレーができなかった。
現在の状況から見ると、チーム内での“立場”もある。岡田は金丸晃輔、桜木ジェイアールに次ぐ3番目のオプション。岡田のあとに特別指定選手として入団してきた熊谷航がスタメンに起用されるようになってからは、さらに優先度が下がった。むろんそうなることは岡田自身も入団前から織り込み済みである。
「僕はシーズンの途中からポッと入ってきただけで、オフシーズンの練習もしていません。金丸さんやジェイさん(桜木ジェイアール)は何年も……ジェイさんに至っては僕がバスケットをやる前からプロでバスケットをやっているわけで、2人はとてつもない経験をしてきたプレーヤーです。僕はまだそうした経験をしている最中なので……ただファーストオプション、セカンドオプションが彼らにいって、たまにボールをもらって1対1をしろといわれてもなかなかリズムが作れません。ターンオーバーをすることもあります。ただそれも今は経験かなと。そういうメンタルでプレーしています」
岡田の持ち味はディフェンスとの間に一瞬のずれを作って、そこを突く力強い1対1だ。しかしプロのディフェンスは容易に崩れない。だからこそ多くのチームがスクリーンなどを使って、チームでずれを生み出そうとしている。だがそのスクリーンが3番手のオプションに向けられることはほぼない。東山高校時代に叩き込まれた“攻めるためのボールのもらい方”も今はまだ鳴りを潜めている。