今シーズンから外国籍選手とは別に帰化選手の登録ができ、日本代表の#22ニック・ファジーカス選手を擁する川崎ブレイブサンダースは大きなアドバンテージを得ている。昨シーズンもスタメンで起用された#7篠山竜青選手、#14辻直人選手、#33長谷川技選手、そしてシックスマンとして勢いづける#0藤井祐眞選手と主軸は大きく変わらない。しかし中堅選手が移籍したことにより、ルーキーの#3林翔太郎選手と#4青木保憲選手の成長が不可欠となる。入れ替わった外国籍選手たちは初めて日本でプレーするために未知数だ。さらに、オフに左足関節遊離体摘出手術を受けたファジーカス選手はまだまだ本調子ではなく、チームになりきれていない。
コンディションも試合勘も足りていないニック・ファジーカスの現状
アルバルク東京との初戦で16点を挙げたファジーカス選手だが、フィールドゴール成功率は5/13本(38.5%)。昨シーズンは59.4%(平均25点)を挙げていた本来の姿にはまだほど遠い。これまでであれば決めていたシュートが外れ、ペイントエリア内でのプレーも少なく、ミスが目立つ。“らしくない”プレーに対し、一番もどかしさを感じているのは、ファジーカス選手自身であった。
「足の方もまだ完璧に回復はしておらず、良い日もあれば悪いときもある。ゲームコンディションを完璧に作るまでには、もう少し時間がかかりそうだ。オフの間はリハビリばかりで、走ることもバスケットをすることもほとんどできなかった。なかなかリズムに乗れないのがもどかしいよ」
足の具合もさることながら、練習量が足りていないことでゲーム勘が戻っていないのは見ての通り。「ニックはスーパーマン」という北卓也ヘッドコーチだが、「とはいえ人間なので、そこは時間をかけながらコンディションを上げていけば良い。本人はウズウズして焦っているが、慌てる必要はない」と伝えており、時間が解決してくれるのを待つばかりだ。
A東京戦は「足の状態も良く、良い感覚でシュートを決めることができていた」とファジーカス選手も日に日に本来の感覚を取り戻しはじめている。
『期待しかない』新外国籍選手たち
新外国籍選手の#21バーノン・マクリン選手と#31シェーン・エドワーズ選手は、出場数こそ少ないが、いずれもNBA経験者だ。昨シーズン、マクリン選手は韓国KBL(平均22.9点)と春先に行われるフィリピンPBA(平均21点)でプレーし、平均30分以上の出場時間を与えられ、平均20点を超えていた。35分出場した10月17日のシーホース三河戦では22点を挙げており、その力を示しはじめている。エドワーズ選手はNBA Gリーグをベースにしながら、オーストラリアやヨーロッパでのプレー経験もある。2人とも機動力があり、速い展開のBリーグにもマッチしている印象を受けた。
ファジーカス選手を軸にしたハーフコートバスケットの強さはすでに証明済み。マクリン選手とエドワーズ選手はトランジションバスケットに長けており、組み合わせによって全く違うリズムでの展開が期待できる。さらに3人同時起用すれば、スモールフォワードとして本領を発揮するエドワーズ選手のプレーも見てみたい。北ヘッドコーチも楽しみにしているが、「いかんせん練習ができていない」のが現状だ。ファジーカス選手も「彼らと一緒に練習する時間が少なく、うまく機能するまでもう少し時間がかかりそうだ」と話しており、こちらも時間が解決するのを待つしかない。
篠山選手も「もっとうまく合えば良くなる感触はありますし、期待しかない」と歓迎している。「二人ともペリメーター陣の意見を聞いてくれるし、自分で打開する力も持っています。人間的にも素晴らしい選手たちです」とケミストリーが合ってくれば脅威になるのは間違いない。
手術したからこそ、これまで以上のパフォーマンスへ進化するチャンス
Bリーグにおける帰化選手はアドバンテージであり、ファジーカス選手の完全復帰は川崎にとってはボーナスのようなものだ。不安要素になり兼ねないベンチ層を厚くし、新外国籍選手と完璧にフィットされるための期間として、ポジティブに捉えることができる。何よりもファジーカス選手が手術に踏み切ったのは、これまで以上のパフォーマンスができるようになるためである。
「もちろん手術前よりも良いプレーができるようにしたいと思ってる。コンディションが上がれば、以前よりも良い動きができるというイメージもある。特にバスケに必要な横の動きが良くなると僕自身が期待しているんだ」
慌てず、焦らず、完全復帰を待ちたい──ところだが、日本代表にとっては負けられないFIBAワールドカップ アジア地区予選のホーム2連戦があと1ヶ月余りに迫っている。「1日で治るわけではなく、日々積み重ねていくしかない」という状況のファジーカス選手も、そこをモチベーションにがんばっている。
「11月末の日本代表戦はとても楽しみにしている。今までどおりのプレーはもちろんだが、それ以上のプレーができるようにがんばってコンディションを上げていきたい。川崎のため、日本代表のために調子を戻さなければいけないことは分かっている。今はそれが励みになっている」
文・写真 泉 誠一