9月27日から10日間で6試合目『タフで難しいシチュエーション』
海外出張先でテレビを見ていると、コート上に書かれた「TACHIKAWA」の文字に驚く。テニスの大坂なおみ選手フィーバーに沸いた東レ・パンパシフィックオープンが生中継されていた。海外で見る馴染みのアリーナはなんだか誇らしい。Bリーグチャンピオンとなったアルバルク東京が、ホームのアリーナ立川立飛に帰ってきた。開幕戦はサンロッカーズ渋谷との東京ダービー。満員の観客を沸かすシーソーゲームの末、73-71でA東京がホーム開幕戦を勝利で飾った。
FIBA アジア・チャンピオンズカップに出場し、6日間で5試合を戦ってきたA東京は、開幕戦3日前の夜にタイから帰国したばかり。決勝戦はイランのクラブPetrochimiに64-68で、接戦の末に敗れて惜しくも準優勝。連戦と長距離移動による肉体的な疲労が抜けきることはなく、最後に敗れたことでの精神的ダメージも少なからずあったはずだ。10日間で6試合目を数え、「タフで難しいシチュエーション」と田中大貴選手が言うのも無理はない。
試合前、チャンピオンリングセレモニーが行われた。「気持ちが高まるものは確かにありました。自分は欲張りなので、もう一回獲りたい」という気持ちが芽生え、目を覚ます。一人ひとりにリングが渡されるその後ろでは、SR渋谷がウォームアップを待たされていた。「相手にしてみれば、今日は絶対に倒してやろうと思ったはずです」と田中選手は気合いを入れ直す。
シュートレンジ広く28点を挙げたライアン・ケリー選手が鮮烈デビュー
SR渋谷は新加入のライアン・ケリー選手が次々とゴールを揺らしていく。デューク大学からドラフト2巡目18位指名され、ロサンゼルスレイカーズでのプレー経験を持つ。211cmあるケリー選手の武器は「オールラウンド」なプレーであり、ディフェンスにとっては的を絞りづらい。開幕戦で挙げた28点のうち14点は2Pシュート、9点は3Pシュート(残りはフリースロー)であり、シュートレンジは広い。レイカーズでの3シーズン中、2013-14シーズンは25試合先発で起用され平均8点、翌シーズンは34試合に増えている。また、同時期にはロバート・サクレ選手とチームメイトだった。「自信はある。これから試合を重ねていくことでもっと良くなるし、プレーの幅を広げていきたい」とBリーグでも同じ黄色いユニフォームを着るサクレ選手とのコンビプレーは楽しみである。
元レイカーズコンビに加え、ファイ サンバ選手が帰化枠におり、3人を同時にコートに立たせるビッグラインナップで対抗するSR渋谷。A東京は、弊誌アワードで最も成長したMIP(Most Improved Player)賞に輝いた竹内譲次選手が25分19秒出場し、基本はオンザコート1となる。ファウルトラブルを避けるとともに、「ケリー選手はインサイドプレーヤーではない」と判断したルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、菊地祥平選手やザック・バランスキー選手をマッチアップさせる。スタッツやインパクトとしてはケリー選手に軍配が上がったが、最後に上回ったA東京が勝利をつかんだ。
「厳しいスケジュールの中、選手たちは本当に良く戦ってくれた」とパヴィチェヴィッチヘッドコーチは、開幕戦を勝ち切った選手たちを称えた。田中選手も、「なんとかみんなで開幕戦を勝ち獲ることができました。自分にとっては大きな一勝でした」と、ホーム開幕戦の勝利をしみじみ噛み締めていた。
大敗を喫したアーリーカップからのステップアップ
「ステップアップできている」と広瀬健太選手が比較したのは、アーリーカップ準決勝でのA東京戦だった。SR渋谷は33-78で完敗している。まだまだ課題点の方が多いが、それでも「自分たちのディフェンスは誰が出ても40分間ある程度の水準を保つことはできていました。オフェンスはビッグマンに頼りがちになってしまったが、それでもスペースを取ったり、周りを生かしながらプレーすることもできました」と良い部分もしっかり出すことができていた。
昨シーズンは敗れたあとにチームの雰囲気が暗くなることを懸念していた広瀬選手だが、「まだ開幕戦なのでそうはならないとは思います。しっかり切り替えて、明日の試合に向かっていきたいです」とこの敗戦もポジティブに捉え、次こそ東京ダービーを制して、今シーズン初勝利を目指すだけである。
互いに日本人選手は変わらず、昨シーズンからすでに土台ができており、ここからどう積み上げていくかが試される。過密スケジュールに疲弊しているA東京だけに、SR渋谷にとっては勝つチャンスは十分にある。一方、外国籍選手枠によりFIBA アジア・チャンピオンズカップに出場しなかったA東京のジャワッド・ウィリアムズ選手は、ウォームアップ後に何本も放っていた3Pシュートを軽やかに決めていた。ケリー選手との、元NBA選手同士のマッチアップを見てみたい。東京ダービー第2戦は、本日7日(日)15時よりアリーナ立川立飛で行われる。
文・写真 泉 誠一