エースの比江島慎選手(ブリスベン・ブレッツ)と、司令塔の橋本竜馬選手(琉球ゴールデンキングス)を失ったシーホース三河は、一からのチーム構築を余儀なくされている。比江島選手もふくめ、ポイントガードが三河の中心であり、鈴木貴美一ヘッドコーチの大事な右腕でもある。鈴木ヘッドコーチとともに、シーホースひと筋17年目を迎える桜木ジェイアール選手もポイントガードの大切さを説いていた。
「ポイントガードとして狩俣(昌也)や村上(直)も独特な特徴を持っており、さらに生原(秀将)が新加入した。まだまだ竜馬の穴を埋めるまでには至らないかもしれないけど、これからチームとともに成長していける選手たち。若い選手を育てて、成長させることは大事なことだ」
狩俣選手のリーダーシップと村上選手のスピードは、すでに鈴木ヘッドコーチも評価している。生原選手に対しては、「若い選手なので吸収も早い。まだ来たばかりなので、完璧ではないのは致し方ないこと。これから様々な勝利や敗戦から覚えることも多く、実戦を通じて経験しなければならない。失敗を恐れずに思い切って、ダイナミックにプレーして、成長していってもらいたい」と期待を寄せていた。
ヘッドコーチの思想や哲学を理解し、選手の特徴を見極めながら成長させるには時間が必要である。「今シーズンは仕事をいっぱいしなければならない」という鈴木ヘッドコーチは、チームの骨格をあらたに組み始めたばかりだ。
オンザコート3により、まだまだ休めない41歳
オンザコートルールが変わったことで、帰化枠の桜木ジェイアール選手と二人の外国籍選手の同時起用をアーリーカップでは試みていた。準決勝の茨城ロボッツ戦では短い時間帯ながらも手応えを感じることができた。翌日の決勝・名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦、第3クォーターはほぼ3人ともコートに立たせ続けていた。高さでのアドバンテージで対抗したかったが、名古屋Dに走られてしまい、「かえってマイナスになってしまった」と指揮官も反省している。それでも、「オンザコート3の時間帯は絶対に必要になる。主力選手が抜けた部分をそこで埋めていかなければならない」と今後もアドバンテージにできるよう試行錯誤は続く。同じ中地区には川崎ブレイブサンダースがおり、帰化枠には日本代表のニック・ファジーカス選手がいることへの対策とも考えられる。
新ルールでは3人の外国籍選手を登録できるが、ベンチ入りできるのは2人まで。アーリーカップの準決勝ではジェームズ・サザランド選手とグラント・ジェレット選手の新戦力を起用し、決勝はサザランド選手と名古屋Dとの対戦経験豊富なアイザック・バッツ選手の異なる組合せを試していた。外国籍選手は必要に応じて入れ替われるが、帰化選手は常にロスター入りしている。決勝・名古屋D戦での桜木選手は30分41秒の出場時間だった。
「今はよく分からないけど……シーズンがはじまって、ケミストリーが上がってくれば、自分のプレータイムも減ってくるのかな」
来月末には42歳を迎える桜木選手だが、昨シーズンも平均29分コートに立っており、オンザコート3を想定している以上、プレータイムが減るとは考えにくい。それだけ鈴木ヘッドコーチの信頼も厚い。プレータイムが減るのは願望に過ぎないのでは?と返すと、「今はコンディションは悪くないけど、シーズンが続けば続くほどきつくなってくるのでどうなるかは分からないよ」と苦笑いしていた。
コンディションが良さそうなのは、その体を見れば一目瞭然である。背中や肩周りがパワーアップしていた。「昨シーズンは押されまくったので、それに対抗できるように今オフはしっかりウエイトをして備えてきた」とベテランになっても課題を克服するため、さらにBリーグで活躍するために、貪欲に進化していた。
『現時点では手応えは感じられていない……でも、優勝までたどり着ける自信はある』
新戦力であるサザランド選手とジェレット選手の印象について、「二人ともシュートが上手い。ポストプレーやペネトレーションでもしっかりミスマッチを作れるので、動きながらシュートを打たせることが大事になってくる。性格的にも素晴らしく、才能溢れる選手たち」という彼らをベストな状態でどうプレーさせるかを常に考えている。比江島選手と橋本選手は抜けたが、「2004-05シーズンから徐々にメンバー変更をしてきた。その中でも優勝できたシーズンがあり、二人がいなくなったことはさほど心配はしていない」と長年培ってきた経験やシーホースの伝統を注入しながら、勝負のシーズンがはじまる。
過去6度のリーグ制覇を果たす三河だが、最後に優勝したのはNBL2014-15シーズンとその期間が空き始めている。新たなチームに対して、「現時点では、正直言って手応えは感じられていない」というのが桜木選手の正直な意見である。しかし、これからはじまるシーズンに向かってしっかり準備し、長いシーズンをどう戦っていくことかによって、ゴールを変えることはいくらでもできる。
「どの選手も学ぶ意欲や成長したいという意志をすごく持っている。これからシーズンを通して成長していくことで、優勝できるポイントまでたどり着ける自信はある」
インタビューが終えるのを待っていた狩俣選手と村上選手、松井啓十郎選手は、桜木選手をつかまえて長めのミーティングを行っていた。負けた直後に反省点を確認し合う光景は、優勝できるポイントに向かって着実に歩みを進めている証拠である。
文・写真 泉誠一